いびきに効く漢方はある?原因別に選び方・注意点を専門家が解説
いびきの治療・治し方
2025.08.04
いびきは漢方で改善できる?いびきの原因別に治療に役立つ漢方を解説!
このコラムの監修医師
田沼 欣樹
医療法人社団 紡潤会 指導医、いびきメディカルクリニック いびき専門医。防衛医科大学校卒。いびきや睡眠時無呼吸の治療を通じて、長期的な健康維持を支援している。
田沼 欣樹
医療法人社団 紡潤会 指導医、いびきメディカルクリニック いびき専門医。防衛医科大学校卒。いびきや睡眠時無呼吸の治療を通じて、長期的な健康維持を支援している。

「最近いびきがひどい」「家族にうるさいと言われる」——そんな悩みを抱えていませんか?
いびきは、睡眠の質を下げるだけでなく、放っておくと健康に影響を及ぼすこともあります。

改善にはCPAP(シーパップ)やマウスピース、外科的な治療法に加えて、体質や根本原因にアプローチする手段として「漢方薬」を取り入れる方法も注目されています。

本記事では、いびきの原因に応じて使われる漢方薬の種類や特徴、注意点についてわかりやすく解説します。

漢方でいびきは改善できる?

漢方の画像

一般的に「漢方薬」と聞くと、民間療法のようなイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、実際には医薬品として認可されている漢方も多く、なかにはいびきの改善に効果があると報告されている処方も存在します。

たとえば、体質を整えることで気道の通りを良くし、睡眠中のいびきを和らげるといった効果が期待できるケースもあります。

いびき治療に有効性が示された漢方「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」について

漢方の画像

いびき改善に役立つ漢方の中でも、「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」は、実際にいびき軽減の報告がある漢方薬の一つです。本章では、柴胡桂枝湯の特徴や、いびきの原因との関係、どのような改善効果が期待できるのかについて詳しく解説します。

「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」とは?

「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」は、風邪を引いた後の体力回復や、胃腸の不調(特にストレスや風邪の影響によるもの)、発熱後の倦怠感、微熱が続く状態などに用いられる漢方です。

この漢方は、下記の9種類の生薬で構成されており、それぞれが炎症を抑えたり、自律神経のバランスを整えたりする働きを持っています。

  • 柴胡(さいこ)
  • 桂皮(けいひ)
  • 黄芩(おうごん)
  • 半夏(はんげ)
  • 甘草(かんぞう)
  • 生姜(しょうきょう)
  • 大棗(たいそう)
  • 人参(にんじん)
  • 大黄(だいおう)

参考:
ツムラ漢方柴胡桂枝湯エキス顆粒A(さいこけいしとう)|株式会社ツムラ

いびきの原因と柴胡桂枝湯の関係

柴胡桂枝湯は、風邪の後の体力回復や、胃腸の不調を伴う軽度の熱性疾患に用いられる漢方薬です。特に、風邪の後に微熱や倦怠感が続く場合に適するとされています。

いびきは、主に気道が狭くなることで発生し、原因は肥満、鼻づまり、喉の筋肉の緩みなど多岐にわたります。また、自律神経の状態は睡眠の質や筋肉の緊張に影響を与えることが知られており、間接的にいびきに関与する可能性が指摘されています。

柴胡桂枝湯は、脳神経系に影響を与える可能性が示唆されており、これが間接的にいびきの軽減に寄与する可能性があります。

柴胡桂枝湯がもたらしたいびき軽減効果について

実際の研究では、柴胡桂枝湯がいびきの軽減に与える影響を検証するため、脳卒中患者を含むいびきのひどい患者を対象に調査が行われました。対象となったのは、脳卒中患者7例を含むいびきのひどい12名(男性10名、女性2名)で、柴胡桂枝湯を1日7.5g、2週間服用してもらい、その変化を観察しました。

結果として、2週間の服用後、12例中11例(92%)でいびきの音量が減少し、そのうち2例(17%)ではほぼ消失、4例(33%)では半減が確認されました。一方、1例(8%)では効果が見られませんでした。

この結果から、柴胡桂枝湯は一部のいびき患者において音量の軽減に寄与する可能性が示唆されました。ただし、具体的な作用機序は不明であり、さらなる研究が必要とされています。

参考:
いびきに対する柴胡桂枝湯の治療効果|竹迫 賢一、日吉 俊紀

【柴胡桂枝湯以外にも】いびきの原因にアプローチできる可能性がある漢方

口を開けて寝ている男性

いびきの原因は人それぞれ異なり、肥満や鼻づまりなどが関係している場合もあります。本章では、柴胡桂枝湯以外にも、いびきの原因に応じてアプローチできる可能性のある漢方を紹介し、それぞれの特徴を解説します。

肥満がいびきの原因の場合

いびきの原因の一つに、肥満による気道の圧迫があります。体重が増えると、首や喉周りに脂肪がつきやすくなり、睡眠中に気道が狭くなることで、空気の通り道が狭められていびきを引き起こしやすくなります。

特に、肥満と睡眠時無呼吸症候群(SAS)は密接に関係しており、適切な体重管理を行うことが、いびきの改善につながります。しかし、食事制限や運動だけで無理に体重を落とそうとすると、継続が難しく、リバウンドしてしまうこともあります。

そこで、代謝を促進し、脂肪の蓄積を抑える作用を持つ漢方を取り入れることで、無理のない体重管理をサポートしながら、結果としていびきの軽減につなげることが期待できます。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」は、体内の余分な水分や老廃物の排出を促し、便秘を改善することで、肥満の管理をサポートする漢方薬です。特に、お腹周りに脂肪がつきやすいタイプの肥満に対して、代謝の促進を助けることで体重減少をサポートするとされています。

この漢方には、防風(ぼうふう)、黄芩(おうごん)、甘草(かんぞう)など18種類の生薬が含まれており、体内の余分な水分や老廃物の排出を促す効果があります。また、腸の働きを活発にし、便秘の改善をサポートする作用もあります。

防風通聖散は、このように便秘の改善や代謝の促進をサポートすることで、体重管理の一助となり、結果として肥満による気道の圧迫が原因のいびき軽減につながる可能性があります。ただし、いびきへの直接的な効果については明確な研究結果がないため、慎重に検討する必要があるでしょう。

参考:
ツムラ漢方防風通聖散エキス顆粒(ぼうふうつうしょうさん)|株式会社ツムラ

大柴胡湯(だいさいことう)

「大柴胡湯(だいさいことう)」は、胃腸の働きを整え、便秘の改善や肝胆系の機能をサポートすることで体重管理を助ける漢方薬です。特に、がっしりとした体格で、便秘気味の人に適しており、胃腸の働きを助けながら体重管理をサポートするとされています。

この漢方には、柴胡(さいこ)、黄芩(おうごん)、大黄(だいおう)、枳実(きじつ)、半夏(はんげ)、生姜(しょうきょう)などの生薬が含まれています。胃腸の働きを整え、便秘を改善することで、体のバランスを整える効果が期待されています。また、腸の動きを活発にする作用があるため、便秘がちで体内に老廃物が溜まりやすい人にも適しています。

この漢方も、肥満が原因でいびきをかいている場合、体重管理をサポートすることで間接的にいびきの軽減につながる可能性があります。ただし、大柴胡湯がいびきを直接改善することを示す研究はなく、生活習慣の改善と併用することが重要です。

参考:
ツムラ漢方大柴胡湯エキス顆粒(だいさいことう)|株式会社ツムラ

鼻づまりがいびきの原因の場合

いびきの原因の一つに、鼻づまりによる気道の狭窄があります。

鼻が詰まると、空気の通りが悪くなり、口呼吸になりやすくなります。口呼吸は、舌や喉の筋肉が緩みやすく、気道をふさぎやすい状態を引き起こすため、いびきをかきやすくなる原因となります。特に、アレルギー性鼻炎や風邪、慢性副鼻腔炎などで鼻づまりが続いている人は、いびきが悪化しやすいとされています。

この鼻づまりを漢方を用いて解消することで、空気の通りを良くし、いびきの軽減が期待できます。

葛根湯(かっこんとう)

葛根湯(かっこんとう)は、風邪の初期症状の改善を目的とする代表的な漢方薬の一つですが、発汗を促して鼻の通りを良くする働きがあり、結果として鼻づまりによるいびきの軽減につながる可能性があります。

この漢方には、葛根(かっこん)、麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、芍薬(しゃくやく)などの生薬が含まれています。これらの生薬の組み合わせにより、発汗を促し、血行を改善することで、風邪の初期症状や鼻づまりを和らげる作用が期待されます。

鼻づまりが原因で口呼吸になり、いびきを悪化させている場合、葛根湯が一時的に鼻の通りを良くすることで、いびきの軽減につながる可能性があります。ただし、いびきの原因が肥満や気道の閉塞である場合は、他の対策が必要になるため、症状に応じた選択が大切です。

参考:
ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A(かっこんとう)|株式会社ツムラ

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」は、水っぽい鼻水やくしゃみを伴う鼻炎や気管支炎の改善に用いられる漢方薬です。特に、アレルギー性鼻炎や花粉症で鼻水が多く出る場合に効果が期待されます。

この漢方には、麻黄(まおう)、桂枝(けいし)、細辛(さいしん)、五味子(ごみし)、半夏(はんげ)、甘草(かんぞう)などの生薬が含まれています。身体を温めて、生体防御反応の結果として現れている多量の鼻水を体内の水分代謝を整えることで鎮める作用があります。

小青竜湯を服用することで、鼻づまりが原因で口呼吸になっている場合、間接的にいびきの軽減につながる可能性があります。ただし、小青竜湯がすべてのいびきに有効なわけではなく、症状に応じた対策が必要です。

参考:
ツムラ漢方小青竜湯エキス顆粒(しょうせいりゅうとう)|株式会社ツムラ

いびきの軽減効果を求めて漢方を使う場合の注意点

注意をうながす医師

漢方は、いびきの原因にアプローチできる可能性がありますが、使用する際にはいくつか注意点があります。この章では、その注意点について詳しく解説します。

即効性は期待できない

漢方は医療機関でも処方され、なおかつ正しく使用すればいびきの原因にアプローチできる可能性がありますが、即効性はあまりないとされています。

漢方は体質を整えながら徐々に症状を改善していくものであり、効果を実感するまでに時間がかかることが一般的です。

特に、いびきの原因が肥満や鼻づまり、自律神経の乱れなどの場合、漢方の持つ代謝促進や炎症緩和の効果が発揮されるまで一定の期間が必要とされます。そのため、短期間の服用ではなく、継続的に使用することが重要です。

体質によって合う・合わないがある

薬全般に言える事ですが、特に漢方薬は、一人ひとりの体質や体のバランスで効き目が左右されてしまうという特徴があります。そのため、同じいびきの症状でも、すべての人に同じ漢方が効果を発揮するとは限りません。その他にも、いびきの原因が肥満によるものなのか、鼻づまりによるものなのかによって、適切な漢方の種類が異なります。

また、体質に合わない漢方を服用すると、期待した効果が得られないだけでなく、胃もたれ・食欲不振・下痢・動悸などの体調の変化を感じることもあります。そのため、専門医と相談しながら、自分の体質に合った漢方を選ぶことが大切です。

いびきを根本から治療したい場合は専門医に相談するのがベスト

漢方は、いびきの原因にアプローチし、体質を整えることで症状を軽減できる可能性がある医薬品です。特に、柴胡桂枝湯は、自律神経のバランスを整え、いびきを軽減する可能性があることが論文でも示唆されています。

また、肥満が原因のいびきには防風通聖散や大柴胡湯、鼻づまりが原因のいびきには葛根湯や小青竜湯などを用いることで、結果的にいびきの軽減につながる効果が見込まれます。しかし、漢方はあごの骨格や睡眠時無呼吸症候群(SAS)などが関係するいびきには十分な改善が見込めないこともあります。いびきを根本から改善したい場合は、専門医に相談し、自分に適した治療法を選ぶことが重要です。

いびきメディカルクリニックでは「パルスサーミア」といういびきレーザー治療を行っております。軟口蓋まわりの粘膜を引き締めることで気道を広げるため、いびきの根本治療が可能です。

当院のいびき治療について詳しく知りたい方は、下記ページから詳細をご確認ください。

<いびきの根本ができるレーザー治療「パルスサーミア」の詳細はこちら>

FAQ

よくある質問

漢方を飲めばいびきを改善することはできますか?
いびきの軽減効果を求めて漢方を使う場合、注意点はありますか?

漢方は、自律神経のバランスを整えたり、鼻づまりを改善したりすることでいびきを軽減する可能性があります。しかし、いびきの原因は肥満や喉の筋力低下、あごの骨格の影響など多岐にわたり、すべてのケースで漢方が根本的な治療となるわけではありません。特に、重度の睡眠時無呼吸症候群(SAS)や、扁桃肥大などの構造的な問題がある場合は、より専門的な治療が必要になります。

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