中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因と治療法、閉塞性との違いについて
目次
一般的に「睡眠時無呼吸症候群」というと、大きないびきをかき、たびたび無呼吸状態を引き起こす睡眠障害のことをイメージする方は多いでしょう。ですが実際には、睡眠時無呼吸症候群には「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」、「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」、「混合性睡眠時無呼吸症候群(MSA)」の3つの種類があり、それぞれで特徴や原因、治療法が異なります。
この記事では、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)にスポットを当て、中枢性タイプの発症原因や特徴的な発症サイン、そして治療法について解説していきます。
また、閉塞性睡眠時無呼吸症候群との違いについても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
睡眠時無呼吸症候群には3種類ある
無呼吸症状と慢性的な睡眠不足を引き起こすことで知られる睡眠時無呼吸症候群ですが、厳密にいうと次の3つの種類に分けることができます。それぞれについて解説していきましょう。
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
- 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
- 混合性睡眠時無呼吸症候群(MSA)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に呼吸が止まる無呼吸状態に何度も陥ることで、慢性的な睡眠不足や日中の激しい眠気を感じるようになる疾患です。
睡眠時無呼吸症候群に含まれる3つの疾患の中でも、この閉塞性タイプが最も多く、9割近くを占めるとされています。そのため、「睡眠時無呼吸症候群」と言う場合、それは閉塞性タイプのことを指していることが多いです。
主な症状は、慢性的な睡眠不足による倦怠感や熟睡感の欠如、そして日中の耐え難い眠気などがあります。
加えて、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を発症している人は、気道がさまざまな原因によって狭められているため、睡眠時はほぼ毎回大きないびきをかきます。その音の大きさは、一緒に寝ている人が苦痛を感じるレベルの騒音です。
ですが、それほどの大きないびきをかいていながら、本人はその自覚がほとんどありません。
ゆえに、本人が気づかないうちにどんどん病状が進行し、悪化しているというのが閉塞性睡眠時無呼吸症候群の怖いところでもあります。
下記の記事で、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックができるので、ぜひ参考にしてください。
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)は、閉塞性無呼吸のように気道閉塞が起きていないにもかかわらず、無呼吸を発症する疾患です。
発症の原因は気道閉塞ではなく、呼吸を制御する脳そのものにあります。
通常、私たちの呼吸は脳の呼吸中枢によってコントロールされているため、意識せずとも鼻や口から空気を取り込んで呼吸が維持されています。ですが、この呼吸中枢がうまく機能しなくなると、呼吸が制御できなくなって無呼吸を起こしてしまうのです。
混合性睡眠時無呼吸症候群(MSA)
混合型睡眠時無呼吸症候群(MSA)は、閉塞性と中枢性の両方の性質を合わせ持った、非常にまれな無呼吸症候群です。このタイプは、中枢性よりは患者数は多いとされていますが、閉塞性ほどの患者数はいません。
そして多くの場合、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と同じように症状を発症し始め、治療も同様のものが行われるとされています。
どうして呼吸機能の低下によって中枢性無呼吸が起きるの?
先ほど、中枢性睡眠時無呼吸症候群は呼吸中枢の機能低下によって引き起こされると説明しましたが、どうして呼吸中枢の機能低下が起きてしまうのでしょうか?詳しく解説していきます。
呼吸中枢の機能低下の原因は心不全の可能性あり
呼吸中枢がうまく働かなくなる原因については、心臓に異常をきたしているという説が有力です。
呼吸のコントロールを行う呼吸中枢は、血液中を流れる二酸化炭素などに反応して、呼吸の命令を出すという仕組みになっています。ところが、心臓に異常をきたして血流が悪くなると、二酸化炭素を十分に送れなくなり、呼吸中枢がうまく反応できなくなってしまうと考えられています。
実際、心不全などで心臓の機能が低下した方のうち、約12〜49%の患者が中枢型の無呼吸を発症するというデータもあります。
他にも、次のようなケースでCSAが見られるとされています。
- 脳卒中などにより、脳の呼吸中枢そのものがダメージを負って、呼吸が制御できなくなるケース
- 腎不全に合併するケース
- 高地に移動したときに生じるケース
- 原因が分からない特発性の中枢型無呼吸
閉塞性無呼吸との大きな違い
共に無呼吸症状を起こすという点で共通している「閉塞性無呼吸」と「中枢性無呼吸」ですが、決定的に違うところがあります。
それは、いびきの有無です。
先ほども解説したように、閉塞性タイプは気道が何らかの原因で閉塞した気道中を空気が通るため、その振動によっていびきが発生します。ですが、中枢性タイプの原因は呼吸を司る脳自体にあるため、気道には変化は起きていません。
そのため、中枢性ではいびきは発生しないのです。しかし、中枢性無呼吸ではいびきとは異なる特有の呼吸パターンを生じます。
それが、チェーンストークス呼吸です。
チェーンストークス呼吸とは、無呼吸になる前に呼吸音が徐々に大きくなったのちに小さくなって最終的には止まってしまう、中枢性無呼吸でしか見られない特徴的な呼吸パターンです。
発生する原因は、呼吸中枢の障害によって呼吸量を調整できなくなるためだといわれており、医療機関では中枢性無呼吸を診断する際の重要な手がかりとされています。
チェーンストークス呼吸については、下記でも解説しています。
中枢性無呼吸に気づいたら
ここまでの内容をまとめると次のようになります。
- 中枢性タイプの原因は閉塞性無呼吸とは異なり、呼吸を制御する脳そのものにある
- 気道が狭まっているわけではないため、いびきは発生しない
- いびきがない代わりに、チェーンストークス呼吸という特有の呼吸パターンを見せる
では、もし家族に無呼吸やチェーンストークス呼吸を指摘されたら、どうすれば良いのでしょうか?
命を落とす危険があるためすぐに病院へ
先ほども解説したように、中枢性無呼吸を発症する原因は、心不全や脳に異常をもたらす脳卒中などです。これらの疾患は、迅速に処置しなければ命を落としたり、深刻な後遺症が残ったりすることもあるため、放置するのは非常に危険です。
もし、チェーンストークス呼吸を指摘されたり、身近な人がチェーンストークス呼吸をしていたりした場合は、すぐに医療機関を受診して治療を受けるようにしましょう。
仮に、中枢性無呼吸が軽症であったとしても、無呼吸の悪化は肥満や糖尿病、高血圧など、深刻な生活習慣病を引き起こすため油断は禁物です。
しかも、無呼吸はうつ病や認知症などの原因となり、生活の質の著しい低下を引き起こすことも指摘されています。
ですので、少しでも症状に心当たりがあれば、見過ごさずに医師の診断を受けることが大切です。
中枢性無呼吸の治療法
実際に、中枢性睡眠時無呼吸症候群の改善のために医療機関を受診すると、次のような治療を受けることが多いです。
- 薬物療法
- CPAP(シーパップ)治療
薬物療法
中枢性無呼吸症候群の治療は、下記のようにその原因に合わせた薬物療法を行っていくパターンが多いです。
例えば、心不全が原因の場合にはACE阻害薬や利尿薬、β遮断薬などで血管を拡げ、血圧を下げることで心臓への負担軽減を行います。また、心臓の働きを助ける強心薬のジギタリス製剤を使うこともあります。
脳卒中や腎不全が原因と考えられる場合は、病気自体の治療や生活改善を行うこともあります。
あわせて、心不全の治療には生活習慣の改善も重要です。
特に、減塩や禁煙などで心臓への負担を減らすことや、アルコールを控えて睡眠の質を保つこと、そして心臓に負担がかからない軽い運動も行うことで、心疾患の発症が起こりにくい体づくりを目指します。
CPAP(シーパップ)治療
薬物療法や生活習慣でも改善しない場合は、CPAP(シーパップ)療法や夜間在宅酸素療法を行います。
CPAPとは、鼻に装着したマスクから持続的に空気が送り込まれることで気道内が陽圧になり、気道の閉塞を抑制し、いびきや無呼吸の解消を目指す治療法です。
本来、CPAP治療は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療で用いられるのが基本ですが、中枢性睡眠時無呼吸症候群においても一定の効果が見込めるとして、薬物療法と合わせて行われることが多いです。
いびきの改善をしたい方はいびきメディカルクリニックへ
最後に、いびき・無呼吸の最新治療として注目を集めている「パルスサーミア」治療をご紹介します。
パルスサーミアとは、いびきの原因である喉粘膜の広がりをレーザーで引き締めることで気道を確保し、いびき・無呼吸を解消する治療法です。これまで、いびき治療といえばCPAP治療を中心とした「対症療法」が基本でしたが、このパルスサーミアはいびきの根本治療を目指すことが可能です。
ですが、喉粘膜にレーザーを当てると聞くと、「怖い」「痛そう」と不安に思われる方もいるでしょう。
しかし、パルスサーミアで使用するレーザーは最新のものなので、粘膜を傷つけることなく引き締めることができます。
そのため、施術中の出血はなく、術後の痛みもほとんどありません。しかも、術後のダウンタイムも喉のやや違和感を覚える程度で、なおかつそれも数日で済みます。
ゆえに、これまでいびき治療を最短で終わらせたい方や、仕事やプライベートに支障をきたしたくないという方に、特におすすめしたい治療法と言えます。
より詳しく知りたい方は、当院の無料カウンセリングにお越しください。専門のスタッフが施術について詳しく説明するのに加え、お客様の疑問に対して丁寧にお答えいたします。
まとめ
今回は、中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因や閉塞性睡眠時無呼吸症候群との違い、そして治療法について解説しました。
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、無呼吸なのにいびきをかかないという少々変わった無呼吸症候群です。患者数も少なく、あまりメジャーではありませんが、チェーンストークス呼吸という特有の呼吸パターンを見せるのが大きな特徴です。
そして、中枢性無呼吸の裏には、心不全などの命を落としかねない危険な疾患が隠れていることが多いため、発症に気づいたらすぐに医療機関を受診し、治療を受けることが大切です。
【よくある質問】
Q.睡眠時無呼吸症候群とは何ですか?
A.脳の機能異常が原因で発症する睡眠時無呼吸症候群で、いびきの症状が見られないのが特徴です。その代わり、チェーンストークス呼吸という特有の呼吸パターンが見られます。
Q.中枢性睡眠時無呼吸症候群は、どのような治療をしますか?
A.原因の疾患に合わせた薬物療法を行っていくのが基本です。病状が深刻な場合は、CPAP治療も併行して行います。