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「いびき」は、よく眠れている時や、安心している状態のような印象を与える症状として世間に広まっています。映画やアニメの影響で、ぐっすり眠れている際に大きないびきをかいている様子を描くからでしょう。
ですが、実際のいびきには、そんなポジティブな印象とは程遠い危険が潜んでいます。
本来いびきとは、呼吸を遮られたことによって発生する音のことで、うまく呼吸ができていないことの表れです。
いびきを無視し続けることによって、睡眠時無呼吸症候群を発症し、脳へ大きなダメージを与えることになります。
睡眠障害と脳の関係について適切な理解を持てるように、危険性や症状の前兆まで詳しく解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群と脳の関係

睡眠時無呼吸症候群は睡眠障害の一つであり、その特徴は睡眠中に十分な酸素を吸引することが難しくなることです。のちに詳しく解説しますが、睡眠時無呼吸症候群を発症することで、無自覚のうちに呼吸停止が発生し、脳と体を低酸素状態へ陥らせてしまいます。
睡眠障害を患うことによって、体感としては日中の倦怠感や眠気などがありますが、どれも些細な問題として軽視される傾向にあり、ただの寝不足であると勘違いされることが多いです。
また、寝不足の解消のために、休日にまとめて睡眠を多くとるなどの改善策もよく耳にしますが、全くと言っていいほど効果がなく、睡眠障害は確実に脳を蝕んでいます。
睡眠時無呼吸症候群の特徴である無自覚の呼吸停止は、脳へ送られる酸素量を低下させるため、常に脳が低酸素状態になります。脳や体の低酸素状態は、疲労の蓄積だけにとどまらず、記憶障害や意識障害を発症させ、死亡リスクを大幅に上昇させることになります。
では、低酸素状態とは具体的にどのような状態のことを指すのでしょうか。
低酸素状態とは?
低酸素状態とは、脳に十分な酸素が送り込まれていない状態のことです。睡眠時無呼吸症候群によって起こる低酸素状態は、低酸素血症とも呼びます。
症状としては、激しい運動を行った後の息切れがイメージしやすいでしょう。個人差はあるものの、重症の方の場合、何気ない生活を過ごしているだけで息切れを起こします。
低酸素状態が続くと、頭痛や意識の低下といった症状が現れるのですが、睡眠中に発症した場合は自覚症状がなく、自分自身の呼吸の異変に気がつきません。
このように、自覚することの難しい低酸素状態を招く病気が、睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群についても、詳しく解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中の無呼吸発作や、呼吸停止の状態が頻発することによって発症します。睡眠時の無呼吸発作や呼吸停止は、基本的には誰しも起こりうる症状であり、一度や二度であれば問題はありません。
ですが、症状が頻繁に発生する場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠時無呼吸症候群には「中枢性睡眠時無呼吸症候群」と、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の二種類が存在します。9割以上の確率で、閉塞性の睡眠時無呼吸症候群を発症しますが、稀に中枢性の睡眠時無呼吸症候群を発症することもあります。閉塞性か中枢性のどちらかによって治療法が異なるため、両者の違いを理解しておかなければいけません。
中枢性睡眠時無呼吸症候群
中枢性睡眠時無呼吸症候群は、脳の呼吸中枢が何らかの原因によって異常を起こすことで、呼吸停止を発生させている状態です。
脳の異常が呼吸停止の原因であるため、脳はすでに危険な状態にあります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、いびきや肥満などの生活習慣が影響し、睡眠中に気道を塞がれてしまうことによって発生します。
中枢性睡眠時無呼吸症候群ではすでに脳に原因がありましたが、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の場合、発症から徐々に脳を蝕んでいきます。睡眠時無呼吸症候群という同じ症状ではありますが、原因が全く異なるということを覚えておきましょう。
低酸素状態になることで脳へ悪影響を及ぼすのは、基本的に閉塞性睡眠時無呼吸症候群であり、中枢性の場合、低酸素とは関係ない脳の異常が見られます。
睡眠時無呼吸症候群と死亡リスク?

睡眠時無呼吸症候群は、自分自身で発見することが難しいのも問題ですが、病気自体軽視される傾向にある点が最も厄介です。
最近ずっと眠気がある、なんだか倦怠感が抜けない。そんな症状を感じる方の多くが発症している病気であるにもかかわらず、我慢することができる程度の症状のせいか、無理をしてしまう方が多く存在します。
ですが、初期症状のうちに治療しなければ、取り返しのつかない病気を呼び寄せることになるのです。
睡眠時無呼吸症候群の発症は、脳と体へ大きなダメージを与えるため、判断力低下による事故や、合併症の発症など、直接死亡にかかわる事故を起こす確率を大幅に上昇させてしまいます。
睡眠時無呼吸症候群を発症することによって高まるリスクを、詳しく解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群は脳梗塞になりやすい?
睡眠時無呼吸症候群を発症することによって、脳へ与えられるダメージを避けることはできません。特に、脳卒中の確率は3倍から4倍にまで上昇します。
脳卒中には、脳の血管が破れてしまう「頭蓋内出血」と、脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」があります。特に後者の脳梗塞は、睡眠時無呼吸症候群を発症することによって発生率が著しく上昇してしまいます。そのため、無呼吸症候群の方は、脳梗塞に注意する必要があるといえるでしょう。
また、脳梗塞と同様に心筋梗塞の確率も上昇します。
初期症状では眠気やだるさを感じる程度だったにもかかわらず、密かに取り返しのつかない合併症の発生率を高めているのです。
脳梗塞や心筋梗塞は、発症による死亡リスクはもちろんですが、命を取り留めても後遺症を患うことがあります。根本である睡眠時無呼吸症候群の治療をなるべく早く開始しましょう。
生活習慣病
生活習慣病と聞くと、幅広い症状を想像できますが、睡眠時無呼吸症候群を含む睡眠障害は、そのどれにも該当する可能性があります。
閉塞性の睡眠時無呼吸症候群の場合、大抵の原因がいびきや肥満によるものです。肥満の原因にはストレスや暴飲暴食などが考えられ、不摂生が原因で発症するいびきや睡眠障害は改善に時間がかかります。
荒れた食生活そのものがストレスの改善方法となっているため、治療を行うことにストレスを要することになるからです。
そのため、いびきや肥満が原因としては多いものの、治療を放置してしまう方が多いのが現状です。ですが、放置することで、心疾患や糖尿病など、さらに大きな病気を発症する原因となります。
注意力の欠如
睡眠時無呼吸症候群を発症した方は、注意力欠如による不慮の事故を起こす可能性が高いです。
上記で紹介した脳梗塞や生活習慣病ばかりが危険視されますが、実際には不慮の事故が多発しています。
睡眠時無呼吸症候群によって低酸素状態に陥った体を無理に動かし続けると、日常の判断力を低下させ、ストレスを溜め込みやすい状態になります。さらに、判断力の低下や疲れの蓄積によってミスが増え、さらにストレスになってしまうなど、負の連鎖に陥ります。
実際に不注意による事故にあった方を後に調べた結果、睡眠障害を患っていた可能性が高いと判明することが多く、ほとんどの方が睡眠障害であることに気がつかないままであることが多いです。
睡眠障害と記憶力の低下

睡眠時無呼吸症候群を放置しておくことによって、記憶力は低下します。
正確には、睡眠障害による寝不足と、脳へ酸素が送られにくくなる低酸素血症が原因です。
記憶力の低下だけでも十分に恐ろしいのですが、睡眠時無呼吸症候群を放置することによって、うつ病やアルツハイマーを発症させる確率も高めてしまいます。
脳の認知機能を確実に蝕む病気のため、早期発見や早期治療が非常に重要です。歳を重ねるにつれて認知症を心配する方が多いのですが、なるべく早いうちに睡眠障害を改善することで、将来的に記憶障害のリスクを減らすことができるということはあまり知られていません。
脳へ蓄積されたダメージ

睡眠障害によって蓄積されたダメージは、休日に寝溜めをすることによって回復できるほど軽いものではありません。
仕事や学校が忙しく寝不足が続き、休日にたくさん眠ることで回復を図る方が多いですが、ほとんどと言えるほど無意味です。眠ったなと感じているだけで、実質何の解決にもなっていません。
寝不足や睡眠障害によって不足した睡眠時間を回復するには、1時間あたりに約4日間の十分な睡眠時間が必要になります。とある研究のデータでは、睡眠不足が続いている方に、9日の間十分な睡眠時間を確保してあげることによって、ようやく正常な体の調子を取り戻したというデータもあります。
つまり、蓄積されたダメージをなくすのは非常に困難です。また、ただの睡眠不足とは違い、睡眠時無呼吸症候群は無自覚のうちに睡眠不足を発生させてしまうため、知らず知らずの内に脳へダメージを与えてしまうことになります。
睡眠時無呼吸症候群の前兆や体の不調には、常に気づける状態であるように心がけましょう。
睡眠時無呼吸症候群の前兆
睡眠時無呼吸症候群の前兆として最も多いのが、日常の倦怠感や眠気です。
ただの寝不足とも捉えられる程度の軽症のため、睡眠時無呼吸症候群を疑う人は少ないです。
ですが、自分自身で体感できるのがその程度の症状なだけであって、睡眠中に激しいいびきをかいていたり、無呼吸に陥っていたりなど、気がつかないところで体は変化し続けています。
また、起床時の顎の疲れや、奥歯のすり減りなどの症状を感じる方は、睡眠中の歯ぎしりが原因となって無呼吸発作を発症している可能性があるので、心当たりがある方は要注意です。
歯ぎしりやいびきは、脳とは全く関係ない症状ではありますが、その症状が睡眠時無呼吸症候群を呼び寄せ、より大きな問題へと発展させてしまいます。
睡眠時無呼吸症候群の治療法
睡眠時無呼吸症候群の治療法は主にCPAP療法やマウスピースが一般的ですが、どちらも長期間継続の必要があり、完治までの目処に個人差があります。
最近では、レーザー治療が徐々に浸透してきています。その中でも「パルスサーミア」は、気道を塞ぐ原因となる余分な脂肪やたるみをレーザーで直接引き締めることができるため、痛みやダウンタイムが少ない人気の治療法です。
治療回数も1回から3回と少なく、確実に原因を改善できるため、治療期間や確実性などを含めてもメリットの多い治療法でしょう。
まとめ

いびきや歯ぎしりが原因で発症する睡眠時無呼吸症候群は、時間と共に脳を蝕む危険な病気です。
たかがいびきだと放置されることが多いですが、気道が塞がれることによって発生している音であることを理解しましょう。
睡眠中、無意識のうちに自分が呼吸停止をしていると理解できれば、睡眠時無呼吸症候群の恐ろしさを感じることができるはずです。
また、症状が分かりにくい病気ではありますが、前兆はあります。前兆を見逃さないように、体のだるさや睡眠時間には日頃から気を配るようにしましょう。
治療法は技術の進歩と共に確実なものとなっていますが、やはり重症化する前に改善するのが効果的です。脳へ蓄積されたダメージをなくすことは難しいことをきちんと理解し、睡眠時無呼吸症候群の危険性を理解しましょう。
参考:
睡眠不足が引き起こす記憶障害
無呼吸症候群をそのままにしておくと
睡眠時無呼吸症候群の合併症
【よくある質問】
Q.睡眠時無呼吸症候群はどうして脳に悪い?
A.睡眠時無呼吸症候群を発症することによって、脳へ送られる酸素力が低下し、脳を低酸素状態へ陥らせてしまうからです。
Q.睡眠時無呼吸症候群は記憶力を低下させる?
A.睡眠障害によって発症する脳の低酸素状態や低酸素血症は、記憶力を低下させます。それだけでなく、認知症やうつ病などの危険性を高め、記憶障害を促進させます。