「パタカラ体操」はいびき対策にも効果あり!簡単トレーニングで口腔機能を鍛えよう

いびきの原因・対策
2025.06.23
「パタカラ体操」はいびき対策にも効果あり!簡単トレーニングで口腔機能を鍛えよう
このコラムの監修医師
田沼 欣樹
医療法人社団 紡潤会 指導医、いびきメディカルクリニック いびき専門医。防衛医科大学校卒。いびきや睡眠時無呼吸の治療を通じて、長期的な健康維持を支援している。
田沼 欣樹
医療法人社団 紡潤会 指導医、いびきメディカルクリニック いびき専門医。防衛医科大学校卒。いびきや睡眠時無呼吸の治療を通じて、長期的な健康維持を支援している。

「パタカラ体操」は、「パ」「タ」「カ」「ラ」と声に出して発音することで、口や舌の筋肉を効果的に鍛えるトレーニングです。簡単な動作で継続しやすく、加齢や生活習慣の影響で衰えやすい嚥下機能を向上させる効果が期待されています。

また、この体操を続けることで、誤嚥性肺炎の予防、唾液分泌の促進、発音の改善といった多彩なメリットが得られるだけでなく、いびき対策にもつながります。

この記事では、パタカラ体操の具体的な効果ややり方、いびき対策にもなる理由について詳しく解説します。健康的な毎日を手に入れるために、ぜひ一緒にパタカラ体操を始めてみましょう。

【いびき対策にもなる】「パタカラ体操」とは嚥下機能(えんげきのう)を向上する高齢者向けのトレーニング

口を開けて笑顔な女性

「パタカラ体操」とは、「パ」「タ」「カ」「ラ」という音を発音することで、口や舌、のど周りの筋肉を鍛える体操です。この体操は、嚥下機能(食べ物を飲み込む力)を維持・向上させることを目的としており、病院や介護施設でも取り入れられる「嚥下訓練」の一つです。

加齢による筋肉の衰えや舌の動きの低下が進むと、食べ物を飲み込む力が弱まり、誤嚥(食べ物や飲み物が気管に入ること)が原因で「誤嚥性肺炎」を引き起こすリスクが高まります。そして、パタカラ体操は食事で使う筋肉を集中的に鍛えることで、唾液の分泌を促進する効果も期待できます。

安全に食事を楽しむための重要な取り組みとして、高齢者や嚥下機能の低下が気になる方におすすめの体操です。継続して行うことで、誤嚥の予防や口腔機能の改善が期待できるでしょう。

参考:
精神疾患患者に対するパタカラ体操の嚥下訓練としての効果|中島 富有子、原 やよい、晴佐久 悟、黒木 まどか、青木 久恵、窪田 惠子

パタカラ体操の目的と期待できる効果

喉を抑え苦しそうな男性

パタカラ体操には、嚥下機能の向上や唾液分泌の促進、滑舌改善など、さまざまな効果が期待されます。これらの目的と効果を具体的に解説します。

パタカラ体操の効果①:食べ物を飲み込む力が向上できる(誤嚥性肺炎の予防)

パタカラ体操は、口や舌の筋肉を鍛えることで、噛む力や飲み込む力を向上させる効果があります。継続して行うと、口が大きく開きやすくなり、食事中の動作がスムーズになることが期待されます。また、飲み込む力が改善されると、食べ物や飲み物が気管や肺に入る「誤嚥」のリスクが減り、「誤嚥性肺炎」の予防につながります。

誤嚥性肺炎とは、食べ物や飲み物、唾液、あるいは逆流した胃液が気管に入り、そこに含まれる細菌が肺に感染することで起こる病気です。嚥下機能が低下した高齢者などに多く見られ、気づかないうちに重篤化することもあります。そのため、パタカラ体操は誤嚥性肺炎を予防し、安全で快適な食事を楽しむために役立つ取り組みとして有効と言えるでしょう。

パタカラ体操の効果②:唾液の分泌が促進される(ドライマウスの防止)

パタカラ体操を行うと、口や舌の筋肉が刺激され、唾液腺が活発に働きます。その結果、唾液の分泌が促進され、「ドライマウス」の予防に役立ちます。ドライマウスは、唾液分泌量の低下によって口腔内が乾燥する症状ですが、単なる乾燥だけでなく、「オーラルフレイル」と呼ばれる口の機能の衰えの初期サインでもあります。

このように、パタカラ体操は、唾液分泌の改善とともに、口腔機能の健康維持にも効果を発揮します。

パタカラ体操の効果③:滑舌が良くなって発音が明瞭になる

パタカラ体操を続けると、口や舌の筋肉が鍛えられて動かしやすくなるため、発音がはっきりする効果が期待されます。

「パ」「タ」「カ」「ラ」といった音の発声が、舌や唇の動きを滑らかにし、滑舌の向上につながります。発音が明瞭になると、言葉が伝わりやすくなり、コミュニケーションがスムーズになるだけでなく、自信を持って会話ができるようになるでしょう。

こうした発音力のトレーニングによって、人間関係や生活の質の向上にもつながるでしょう。

そもそもなぜ「パ・タ・カ・ラ」なのか、発音の目的について解説

パタカラ体操では、「パ」「タ」「カ」「ラ」という音を使うことで、食べ物を飲み込むために必要な筋肉を効率よく鍛えることができます。それぞれの音には、特定の筋肉を鍛える目的があり、期待できる効果を表にまとめました。
 

  • 「パ」:
    唇を閉じる動きで口輪筋や頬筋を鍛えます。この筋肉を強化することで、食べ物が口からこぼれるのを防ぐ効果があります。
  • 「タ」:
    舌を上あごに押し付ける動作で舌筋を鍛えます。これにより、食べ物を押しつぶし、咽頭(喉の奥)へ輸送する力が向上します。
  • 「カ」:
    喉の奥にある筋肉を鍛えることができます。この筋肉を強くすることで、飲み込むときに食べ物が間違って鼻のほうに行かないようにし、食べ物を安全に食道へ送る手助けをします。
  • 「ラ」:
    舌の動きを強化し、食べ物を一塊にまとめて飲み込みやすくする力を養います。

今すぐできる!「パタカラ体操」のやり方

老いた女性と若い女性

パタカラ体操は、自宅ですぐに始められる簡単なトレーニングです。「パ」「タ」「カ」「ラ」と一音ずつ発音する方法から、連続して発音する練習、さらに文章の中で使う方法まで、段階を踏んで行います。具体的なやり方をご紹介します。

やり方①:「パ」「タ」「カ」「ラ」と一音ずつ発音する

パタカラ体操の基本は、「パ」「タ」「カ」「ラ」と1文字ずつ発音することです。それぞれの音を明確に発音しながら、口や舌の動きを意識して行いましょう。唇や舌をしっかり動かすことで、口周りや舌の筋肉が鍛えられます。

例えば、以下のように繰り返します。
 

  • パ、タ、カ、ラ、パ、タ、カ、ラ……

5〜10回程度を目安に練習してください。慣れてきたら、スピードを少しずつ上げてみましょう。素早く発音することで、より効果的に筋肉を鍛えることができます。

やり方②:「パパパ…」「タタタ…」と連続で発音する

次に挑戦するのは、「パパパ…」「タタタ…」と連続で発音する方法です。一文字ずつの発音より少し難易度が上がりますが、スムーズに発音できるよう練習していきましょう。

例として、以下のように繰り返します。
 

  • パパパ……タタタ……カカカ……ラララ……

ポイントは、速度を急に上げようとせず、一つ一つの発音を正確に、明瞭に行うことです。これにより、口や舌、喉の筋肉を効率よく鍛えることができます。

1セットあたり5回程度を目安に行い、慣れてきたら速度を少しずつ上げるとさらに効果的です。

やり方③:「パタカラ」が含まれた文章を発音する

最後に、「パ」「タ」「カ」「ラ」を多く含んだ文章を発音してみましょう。単音の発音よりも難易度は少し上がりますが、リズムよく正確に発音することで、口腔内の筋肉をさらに効果的に鍛えることができます。

<例文>

  • ぱんだのたからもの
  • たぬきがタンバリンをたたいた
  • カラスがカアカア、かきくけことないた
  • ラッコがらんらん、らっきょうをたべた

これらの文章を声に出すときは、言葉をひとつひとつ明瞭に発音することを意識しましょう。単音の練習に比べて、文全体を発音することで、舌や唇、喉の筋肉がより総合的に鍛えられます。

難しく感じる場合は、無理をせずに簡単な例文から始めて、少しずつレベルアップしていくと良いでしょう。継続することで、滑舌の改善や嚥下機能の向上が期待できます。

参考:
お口の働きを高める体操|大阪府歯科医師会

パタカラ体操はいびき対策にも効果が期待できる

歯並びが悪いようす

パタカラ体操は、いびきの原因となる口呼吸を防ぐ効果が期待できる体操です。口や舌の筋肉を鍛えることで、睡眠中に口が開きにくくなり、気道が確保されやすくなるため、いびきや関連するリスクの予防につながります。詳しく解説しましょう。

パタカラ体操がいびき対策になる理由:睡眠中の口呼吸を防げるから

いびきの主な原因のひとつは口呼吸です。睡眠中に口が開いてしまうと、気道が狭まりやすくなり、振動が起こっていびきを引き起こします。

パタカラ体操を行うことで、口や舌、喉周りの筋肉が鍛えられ、睡眠中に鼻呼吸ができるようになります。すると、睡眠中に自然と口を閉じ、いびきの発生を防ぐ効果が期待できます。また、口呼吸を防ぐことで、喉の乾燥や空気中のホコリや細菌が付着することによる炎症を予防することにもつながり、さらなるいびき防止効果だけでなく、体全体の健康をサポートします。

パタカラ体操でいびき対策をするメリット:睡眠時無呼吸症候群や合併症の予防につながる

パタカラ体操を続けることで、いびきの改善だけでなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)やそれに伴う合併症の予防が期待できます。

SASは、睡眠中に一時的に呼吸が止まる症状を繰り返す疾患で、いびきがその初期兆候となる場合があります。SASを放置すると、慢性的な睡眠不足に陥るだけでなく、高血圧や心疾患、糖尿病などの合併症を引き起こすリスクが高まり、最悪のケースでは命に関わることもあります。

パタカラ体操は口や舌、喉周りの筋力を向上させ、気道の狭窄を防ぐことで、こうしたいびきとSASの発生リスクを低減します。さらに、睡眠の質が向上することで、日中の眠気や疲労感の軽減にもつながり、健康全般に良い影響を与えるメリットがあります。

参考:
お口の働きを高める体操|大阪府歯科医師会

パタカラ体操をする際によくある質問

おじいちゃんとおばあちゃん

パタカラ体操は、手軽に始められる健康法ですが、実践するうえで疑問や不安を抱く方もいるかもしれません。この章では、パタカラ体操を行う際に多く寄せられる質問に対してわかりやすく回答します。

質問①:パタカラ体操は1日のうちにいつ、何回やればいいの?

パタカラ体操を行うタイミングとして最も効果的なのは、食事の前です。

食事前に口や舌の筋肉をしっかり動かしておくことで、嚥下機能が活性化され、誤嚥やムセの予防につながります。また、食事前に取り入れることで、習慣化しやすくなり、継続的な効果が期待できます。ゆえに、毎食前の1日3回を目安に行いましょう。

ただし、体調や時間の都合で難しい場合は、無理をせずできる範囲で取り組むことが大切です。パタカラ体操は継続が鍵となるため、自分に合ったペースで実践しましょう。

参考:
パタカラ体操|四街道市

質問②:「パタカラ体操」は「あいうべ体操」と何が違うの?

パタカラ体操とあいうべ体操は、どちらも口や舌の筋肉を鍛える体操ですが、目的とやり方が異なります。違いを表にまとめました。
 

  • パタカラ体操:
    嚥下(飲み込む)機能を高め、誤嚥性肺炎の予防を目的としています。「パ」「タ」「カ」「ラ」を一音ずつ発音したり、連続して発音したりすることで、飲み込むための筋肉を効率よく鍛えます。この体操は特に、噛む力や飲み込む力を向上させたい方に向いています。
  • あいうべ体操:
    口呼吸を鼻呼吸に改善したり、唇の筋肉を引き締めたりすることを目的としています。「あ」「い」「う」「べ」と大きく口を動かしながら発音することで、唾液の分泌を促し、口腔内の乾燥を防ぎます。また、舌筋を鍛えることで、食べこぼしや飲み込みの改善にもつながります。

どちらも口腔ケアに有効な体操です。組み合わせて行うと、より効果が期待できるでしょう。

参考:
お口の働きを高める体操|大阪府歯科医師会

質問③:パタカラ体操以外に嚥下機能の向上効果が期待できる口のトレーニングはある?

パタカラ体操以外にも、嚥下機能の向上に役立つトレーニングがいくつかあります。それぞれの特徴を以下にまとめました。
 

  • ぶくぶくうがい
    <やり方>
    水を使わず、口をしっかり膨らませてトレーニングを行います。
     
    ①両頬をしっかりふく らませて「ぶくぶくぶく~」を10回する
    ②右頬だけで「ぶくぶくぶく~」を10回する
    ③左頬だけで「ぶくぶくぶく~」を10回する
    ④両頬で勢いよく「ぶくぶくぶく〜」を10回する
     
    <目的>
    頬筋や口輪筋などの表情筋に加え、舌を動かす舌筋を鍛えることができ、口周り全体の筋力アップが期待できます。
  •  
     

  • 早口言葉
    <やり方>
    早口言葉を繰り返し発音し、慣れてきたら速度を上げます。

    <例>
    ・なまむぎなまごめなまたまご
    ・となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ
     
    <目的>
    発音を意識することで、舌や口周りの筋肉が鍛えられ、誤嚥を防止する効果が期待できます。
  •  
     

  • カエルの合唱
    <やり方>
    「カエルのうたは〜」のように「カエルの合唱」を歌い、合唱や輪唱で難易度を調整します。

    <目的>
    歌うことで喉を動かし、嚥下機能が鍛えられます。

  •  
     

  • 舌の運動
    <やり方>
    ①舌で下あごの先を触るつもりで舌を伸ばします。
    ②舌で鼻の頭を触るつもりで舌を伸ばします。
    ③舌を左右に伸ばします。
    ④最後に、口の周りをぐるりとマッサージするように舌を動かす。
     
    口の中で歯の表面を舌で触れながら一周するのも良いでしょう。
    右回り・左回りを3回ずつ、無理のない範囲でやってみましょう
     
    <目的>
    舌を動かすことで、嚥下機能が高まり、誤嚥防止が期待できます。

参考:
お口の働きを高める体操|大阪府歯科医師会

パタカラ体操を実践して嚥下機能向上やいびき対策をしよう

パタカラ体操は、口や舌の筋肉を効果的に鍛えることで、嚥下機能を向上させ、誤嚥性肺炎の予防やいびき対策にもつながるトレーニングです。

加齢や生活習慣の影響で衰えやすい口腔機能を維持・改善するためには、日々の継続が鍵となります。中でも、簡単な動作と発音だけで行えるパタカラ体操は手軽で、忙しい日常にも取り入れやすいのがポイントです。さらに、睡眠中の口呼吸を予防することで、いびきの改善や睡眠時無呼吸症候群(SAS)の予防につなげることも可能です。

今回ご紹介した手順やトレーニングを参考に、ぜひ日々の習慣に取り入れてみてください。

パタカラ体操の他にもいびき対策はあります。下記記事も併せてチェックしてみてください。

FAQ

よくある質問

「パタカラ体操」とはなんですか?

パタカラ体操はいびき改善にも効果がありますか?

パタカラ体操を行うことで、口や舌、喉周りの筋肉が鍛えられ、睡眠中に鼻呼吸ができるようになります。すると、睡眠中に自然と口を閉じ、いびきの発生を防ぐ効果が期待できます。

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