鼻いびきと喉いびきの違いとは?タイプ別の原因を解説
いびきの原因・対策
2021.12.15
このコラムの監修医師
田沼 欣樹
医療法人社団 紡潤会 指導医、いびきメディカルクリニック いびき専門医。防衛医科大学校卒。いびきや睡眠時無呼吸の治療を通じて、長期的な健康維持を支援している。
田沼 欣樹
医療法人社団 紡潤会 指導医、いびきメディカルクリニック いびき専門医。防衛医科大学校卒。いびきや睡眠時無呼吸の治療を通じて、長期的な健康維持を支援している。

いびきの原因には大きく分けて「鼻いびき」と「喉いびき」があります。それぞれに合った対策をしないと、いびきが改善しにくいこともあります。

この記事では、鼻いびきと喉いびきの違いをわかりやすく解説し、タイプごとの原因や効果的な対処法を紹介します。

「いびきがうるさいと指摘された」「家族やパートナーのいびきが気になる」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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「鼻いびき」と「喉いびき」は何が違う?

寝ながら鼻をかむ男性

いびきは、気道が狭くなる原因によって「鼻いびき」と「喉いびき」に分けられます。

「鼻いびき」とは

鼻いびきとは、鼻づまりによって空気の通り道が狭くなり、呼吸時に音が鳴るいびきのことです。

アレルギー性鼻炎や風邪、鼻の構造による影響などが原因で起こることが多く、鼻呼吸がしづらい人に見られます。

「喉いびき」とは

喉いびきとは、寝ている間に舌や喉の周りの筋肉がゆるむことで気道が狭くなり、呼吸時に音がなるいびきのことです。

肥満や扁桃肥大、口呼吸の習慣がある人に起こりやすいのが特徴です。

「鼻いびき」と「喉いびき」の原因の違い

肥満の男性

ここでは、何が原因でいびきが生じるのか、鼻いびきと喉いびきに分けて具体的に説明します。

「鼻いびき」の原因

鼻いびきは、鼻の粘膜が腫れることで空気の通り道が狭くなり、呼吸時にいびきが発生する状態です。
鼻腔の粘膜が腫れる原因としては、アレルギー性鼻炎や風邪、鼻の構造に関わる問題などが挙げられます。

アレルギー症状

鼻いびきの原因として多いのが、アレルギー性鼻炎による鼻づまりです。
アレルギー性鼻炎には、花粉が原因の「季節性」と、ダニ・ホコリ・ペットの毛などが原因の「通年性」があります。

これらのアレルゲンによって鼻の粘膜が炎症を起こすと、鼻の通りが悪くなり、呼吸がしづらくなります。
その結果、体は自然と口呼吸になり、いびきの原因になります。

アレルギー性鼻炎が原因の鼻いびきは、炎症が治まれば改善されるケースもありますが、放置すると慢性化しやすくなります。
特に通年性アレルギーの場合は、日常生活におけるアレルゲン対策や治療の継続が重要です。

骨格の影響

鼻いびきの原因としては、鼻炎などの炎症だけでなく、骨格による影響が関係していることもあります。

特に、顎の骨が小さい・後退している場合、気道が狭くなりやすく、鼻呼吸がしづらくなるため、いびきが発生しやすくなります。

近年は食生活の変化により、硬いものをあまり噛まない習慣が定着し、顎の発達が十分でない人が増えているとも言われています。
その影響もあり、女性を中心に骨格的な要因からいびきに悩む人が増えているという指摘もあります。

「喉いびき」の原因

喉いびきは、喉の周囲の気道が狭くなることで発生します。気道を狭くする原因には、以下のようなものがあります。

脂肪の蓄積

肥満によって喉のまわりに脂肪がつくと、気道が圧迫され、呼吸のたびにいびきをかきやすくなります。
特に首の周囲や舌の根元に脂肪が蓄積すると、気道を物理的に狭めてしまいます。

脂肪のつきやすさは個人差がありますが、体の中に必要以上の脂肪がある場合は、いびきだけでなく健康全般にも悪影響を与える可能性があります。
いびきの改善とあわせて、体重管理を意識することも大切です。

筋肉の緩み・弛緩

疲労やストレスが溜まっているとき、またアルコール摂取時などは、喉まわりの筋肉がゆるみやすくなります。
筋肉が弛緩すると、気道が一時的に狭くなり、いびきの原因になることがあります。

顎が小さい

顎が小さい人は、喉の気道が狭くなりやすく、いびきをかきやすい傾向があります。

日本人はもともと欧米人に比べて顎が小さい傾向があり、近年では小顔ブームや食生活の変化により、顎の成長が不十分な人が増えていると言われています。
特に女性では、顎の骨格が小さいことに加えて、筋力も弱まりやすいため、気道が狭まりやすく、いびきに悩む人が増えているようです。

また、女性ホルモンには気道を広げる作用があるため、若い頃はいびきをかかなかった人でも、40〜50代以降にホルモンの分泌が減ることで、いびきをかきやすくなることがあります。

睡眠薬や精神安定剤の影響

一部の睡眠薬や精神安定剤には、筋肉を弛緩させる作用があります。
そのため、服用すると喉の筋肉がゆるみ、気道が狭くなっていびきをかきやすくなることがあります。

薬を飲み始めてからいびきがひどくなったと感じる場合は、自己判断で服用を中止せず、かかりつけ医に相談しましょう。

妊娠中の体の変化

妊娠中や産後は、女性の体に大きな変化が起こります。
胎児への栄養供給や授乳に備えて皮下脂肪がつきやすくなり、体重も増えやすくなることで、首まわりや喉の周囲に脂肪が蓄積し、気道を圧迫することがあります。

このため、妊娠後にいびきをかくようになる女性も少なくありません。

「鼻いびき」よりも、「喉いびき」に注意が必要

鼻孔を検査する女性

鼻いびきは、多くの場合、鼻づまりの原因となっている炎症などを解消すれば改善します。鼻中隔湾曲症が原因の場合も、必要に応じて矯正手術を行うことで改善が期待できます。

一方、喉いびきの場合は、寝ている間に呼吸が何度も止まる睡眠時無呼吸症候群に陥っている可能性もあるため、注意が必要です。特に「口は閉じているのに喉いびきをかいている」という人は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

放っておくと危険!いびきが引き起こす生活・健康リスク

仕事中にあくびをする男性

いびきは単なる音の問題ではなく、日常生活や健康にさまざまな悪影響を及ぼすことがあります。
鼻いびきでも喉いびきでも、放置してしまうことで自分だけでなく周囲の人にも影響を与えてしまう可能性があります。

例えば、自分のいびきで目が覚めることは少なくても、同じ部屋で寝ている家族や旅行中の友人など、周囲の睡眠を妨げてしまうことがあります。
いびきが原因で相手に気を使わせてしまい、人間関係にストレスが生まれることもあるかもしれません。

さらに、いびきが重度になると、睡眠中に呼吸が止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」に陥るリスクもあります。
このような状態では、どれだけ眠っても疲れが取れず、日中の眠気や集中力の低下、記憶力の低下といった症状が現れることがあります。

放置すれば、高血圧・脳卒中・心疾患など、命に関わる病気のリスクが高まるとも言われており、いびきは決して軽視すべきものではありません。

 

「鼻いびき」や「喉いびき」の解消方法

 

抱き枕を抱えて寝る女性

 

家族や友人に迷惑をかけるだけでなく、自分の健康にも関わる鼻いびきや喉いびき。どのように解消すればいいのでしょうか。

ここからは、自宅でできる対策を紹介します。軽い症状であれば、ご紹介する対策でいびきが解消することもあります。

しかし、改善が見られない場合や、呼吸が止まっているような場合は、専門医を受診しましょう。

鼻いびき対策

鼻うがい

鼻づまりが原因の鼻いびきには、鼻うがいが効果的です。生理食塩水を使って鼻の奥を洗浄することで、アレルゲンやホコリ、花粉などを除去し、鼻通りをスッキリと整えることができます。

市販の鼻うがい専用ボトルを使えば、初心者でも簡単に取り入れられます。特に寝る前に行うと、就寝中の呼吸がしやすくなり、いびきの軽減が期待できます。

鼻腔拡張テープの使用

鼻腔拡張テープは、鼻の外側に貼ることで小鼻を広げ、鼻腔内の通気をスムーズにします。これにより、鼻づまりによる空気抵抗が軽減され、いびきの発生を抑える効果が期待できます。

市販されており、就寝前に簡単に装着できる点が魅力です。特に、アレルギーや軽度の鼻炎によって夜間だけ鼻が詰まる方におすすめで、副作用が少ないことから継続しやすい方法でもあります。

鼻呼吸の意識付け

日中の口呼吸の習慣は、就寝時にも影響します。鼻呼吸を意識することで、いびきの予防につながります。

口呼吸の癖がある人は、口閉じテープを使って強制的に鼻呼吸を促すことも有効です。現代人はマスク生活や柔らかい食べ物による影響で口の筋肉が衰えがちなので、鼻呼吸の習慣づけが大切です。

アレルゲン除去(掃除・空気清浄機)

アレルギー性鼻炎が原因の鼻いびきには、環境の見直しが欠かせません。寝室を中心に以下を意識しましょう:

  • 寝具のこまめな洗濯

  • フローリングや家具の拭き掃除

  • 空気清浄機の設置

これらを実践することで、アレルギーによる鼻づまりが和らぎ、鼻呼吸がしやすくなります。

喉いびき対策

体重を落とす

首まわりの脂肪が気道を圧迫し、いびきを引き起こすため、適正体重を目指すことは喉いびきの改善に有効です。

急激なダイエットは逆効果になるため、適度な運動とバランスの取れた食生活を意識しましょう。特に有酸素運動を日常に取り入れることが効果的です。

横向き寝

仰向けで寝ると舌が喉に落ち込みやすく、気道を塞ぐ原因になります。横向きで寝ると気道が確保され、いびきの軽減が期待できます。

抱き枕などを使って横向き寝を習慣化しましょう。寝返りしやすいマットレスや、横向き寝をサポートする専用枕の使用もおすすめです。

枕やマットレスを変える

高すぎる枕や柔らかすぎる寝具は気道を狭める要因となります。自分の首や姿勢に合った寝具を選ぶことで、いびきが軽くなる可能性があります。

特に横向き寝に適した設計の枕を試してみるのもおすすめです。高さを調整できるタイプや、頭と首のラインを自然に支える構造のものを選びましょう。

就寝前はアルコールを飲まない

アルコールには筋肉を緩める作用があり、喉周りの筋肉もゆるんで気道が狭まりやすくなります。

また、口呼吸を誘発しやすく、いびきを悪化させることもあるため、就寝前の飲酒は控えるようにしましょう。アルコールを控えることで、睡眠の質自体も向上します。

タバコの量を減らすか禁煙する

喫煙は気道の粘膜を炎症させ、いびきを助長します。少しずつでも本数を減らし、できれば禁煙を目指しましょう。

禁煙補助薬の活用や、1日単位の目標設定などで、無理なく継続する工夫が大切です。喫煙によるいびきは、やめた翌日からでも変化が感じられるケースがあります。

マウスピースを付ける

喉の奥が狭くなるタイプのいびきには、マウスピースが効果を発揮します。医療用のものは保険適用も可能です。

市販品もありますが、効果に個人差があるため、医師の指導を受けることが推奨されます。マウスピースによって下顎を前方に出し、気道を広げることで、いびきを軽減できます。

共通の対策

加湿器を使う

乾燥した室内では鼻や喉の粘膜が荒れ、いびきがひどくなりがちです。加湿器で湿度40〜60%を保ち、快適な睡眠環境を整えましょう。

加湿器はドライノーズや乾燥による炎症を防ぐだけでなく、風邪予防や口呼吸の抑制にも役立ちます。加湿器がない場合は、濡れタオルを部屋に干すだけでも効果があります。

マスクを付ける

マスクは保湿だけでなく、口呼吸の予防にもつながります。ガーゼ素材や夜用マスクなど、肌に優しいものを選ぶのがおすすめです。

特に冬場やエアコン使用時には乾燥しやすく、マスクが口元の湿度を保ってくれるため、喉の炎症予防にも効果的です。鼻呼吸への習慣づけをサポートするマスクも市販されています。

市販のいびき防止グッズを使う

マウスピース以外にも、口閉じテープや鼻腔拡張テープなど、市販のいびき対策グッズを活用するのもひとつの方法です。原因に合わせて選びましょう。

使用する際は、効果が出ない場合もあるため、いびきのタイプ(鼻・喉)に合ったグッズを選ぶことが重要です。使用後の変化を記録し、必要に応じて医師のアドバイスを受けることも検討しましょう。

いびきを録音できるアプリを使う

自分のいびきを把握することで、対策のきっかけになります。家族に勧める際も「一緒にやってみよう」と気軽に始めることで、協力を得やすくなります。

最近では、いびきの音量や発生時間、睡眠の質まで記録できるアプリも多く登場しています。いびきの傾向を把握することで、原因の特定や対策の優先順位を明確にできます。

【よくある質問】
Q.鼻いびきの原因とは?

A. 鼻いびきの主な原因は、風邪やアレルギー性鼻炎による鼻づまりです。鼻の粘膜が炎症を起こし、鼻の息の通り道が狭くなることで音が鳴ります。
他にも、病気や体質、疲労など原因はさまざまです。

Q.鼻いびきと喉いびきの違いは何ですか?

A. 鼻いびきと喉いびきの違いは、気道が塞がれる箇所です。
気道が狭くなる原因が鼻にあるときを「鼻いびき」、舌や扁桃腺など口の中に原因があるときを「喉いびき」と呼びます。

 

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