概日リズム睡眠障害とは?睡眠リズムが乱れる理由と治療法について解説

「夜になったのに、いつまで経っても眠れない…」
「朝になっても全然起きることができない…」
このような症状で悩んでいる人は、「概日リズム睡眠障害」を発症している可能性があります。概日リズム睡眠障害は、社会生活を送るうえで望ましい時間帯に寝起きすることができなくなる睡眠障害で、全身の強い倦怠感や日中の強い眠気などの症状を引き起こします。
また、この疾患は他の人と同じように会社や学校での生活を送ることができないという不安から、強いストレスを感じるのも特徴のひとつです。
本記事では、概日リズム睡眠障害を発症する原因や治し方について解説していくので、ぜひ参考にしてください。
目次
概日リズム睡眠障害は主要な睡眠障害のひとつ

概日リズム睡眠障害とは、社会的に望ましい時間帯に寝起きすることができなくなる疾患で、睡眠に異常をきたす睡眠障害のひとつです。
主に見られる症状としては、夜になっても眠くならない、朝になってもなかなか起きられないなどの不眠症状から始まり、それに伴う慢性的な寝不足や集中力低下、日中の居眠り、強い倦怠感などがあります。
参考:
概日リズム睡眠障害 07.神経疾患|MSDマニュアルプロフェッショナル版
概日リズム睡眠障害を引き起こすメカニズム

どうして、社会的に望ましい時間に寝たり起きたりすることができなくなるのでしょうか?概日リズム睡眠障害の発症には、次の3つの異変が関係しています。
- ①体内時計が乱れる
- ②乱れた体内時計の修正が行われない
- ③望ましいタイミングで寝起きができなくなる
①体内時計が乱れる
概日リズム睡眠障害を発症する最初の異変は、体内時計の乱れです。
人間の睡眠は「概日リズム(サーカディアンリズム)」と呼ばれる体内リズムによってコントロールされており、概日リズムは地球の自転に合わせて約24時間周期で働いています。
けれども、この概日リズムはピッタリ24時間ではなく、正確には24時間20分とややズレがあると言われています。このわずかなズレによって、どんどん概日リズムが後ろ倒しになり、体内時計が乱れていくのです。
②乱れた体内時計の修正が行われない
大抵の人は概日リズム睡眠障害を発症することなく、健康的に生活しています。人間の体には体内時計を修正するスイッチがあり、それを作動させることによってズレを正常に戻しています。そのスイッチの作動に欠かせないのが、太陽の光です。
太陽にはブルーライトと呼ばれる青い光の成分があり、その強いエネルギーによって目の奥にある網膜までしっかりと光を届けることができます。そして、網膜から刺激を受け取った脳は朝が来たことを感知し、体内時計のズレを修正して全身に覚醒を促します。
しかし、概日リズム睡眠障害の方は、体内時計のズレの解消が適切に行われません。いつも少しずつずれたままなので、次第に地球の明暗周期とは異なるようになり、概日リズム睡眠障害を発症してしまうのです。
③望ましいタイミングで寝起きができなくなる
どうして修正されるはずの体内時計のズレが、いつまでも解消されないのでしょうか?
先ほど、太陽が発するブルーライトは脳を刺激して覚醒を促すと解説しました。このブルーライトですが、実は発しているのは太陽だけではありません。私たちにとって身近なスマホなどのデジタル機器やLEDライトもブルーライトを発しています。
そして、大昔の人間にとって、ブルーライトのような強力な光は、太陽からしか浴びることはありませんでした。しかし、現代は夜でも街が明るく、手元にはスマホが常にある状態です。
これにより、夜になっても眠気がやってこず、入眠時刻が遅くなります。それに伴って、睡眠時間も短くなるため、朝になかなか起きることができず、昼間に眠気を感じるようになってしまうのです。
概日リズム睡眠障害で見られる5つの症状のパターン

概日リズム睡眠障害を発症すると見られる症状には、次の5つのパターンがあります。
- 交代勤務型
- 睡眠相後退型(睡眠相後退症候群)
- 睡眠相前進型(睡眠相前進症候群)
- 非24時間概日リズム睡眠障害
- 不規則睡眠・覚醒障害
交代勤務型
交代勤務型は、その名の通り不規則なシフト勤務などによって体内時計がどんどんずれていき、地球の明暗周期に合わなくなった状態です。主に、夜勤や当直、シフト勤務をしている人に多く見られます。
症状による影響
交代勤務型を発症することによる影響は、夜間の不眠症状や、日中の強い眠気、集中力の低下、倦怠感などに加え、強い精神的なストレスとしても現れます。
睡眠相後退型(睡眠相後退症候群)
睡眠相後退型は、体内時計が後ろにずれていることにより、夜になっても眠くならず、入眠時刻が遅くなってしまう状態です。主に、夜ふかしをしがちな10代での発症が多いです。
症状による影響
睡眠相後退型を発症すると、明け方近くになっても寝つけず、その反動で一旦寝つくと昼過ぎまで起きることができないという症状に陥ります。
また、無理して起きても日中に強い眠気や倦怠感を感じるため、日常生活が通常のように送れなくなり、強い苦痛を感じるのもこのタイプの特徴です。
睡眠相前進型(睡眠相前進症候群)
睡眠相前進型は、体内時計が乱れて睡眠が早い時間帯にずれてしまった状態です。本症状は特に高齢者に多く、日中の活動性の低下や極端な早寝、加齢によるメラトニン(眠りに導くホルモン)の低下が要因だと考えられます。
症状による影響
睡眠相前進型は体内時計が進んでしまっている状態なので、発症すると極端な早寝早起き生活をするようになります。重症化すると、夕方ごろから眠気を感じるようになり、遅くまで起きていようと思っても起きることができなくなるとされています。
非24時間概日リズム睡眠障害
非24時間概日リズム睡眠障害は、入眠・起床時間が毎日30〜60分ずつ後ろにずれ、1日24時間のリズムと全く合わなくなった状態です。
患者の多くは全盲者で、太陽光の刺激を受けないことにより、体内時計がずれたままになります。
症状による影響
非24時間概日リズム睡眠障害は、夜間に眠れている時期と、昼夜が逆転して昼間に眠ってしまう時期とが交互に出現する病態です。そのため、夜間の不眠と日中の過度の眠気、全身倦怠感により社会生活に支障をきたす時期が周期的に出現するようになります。
また、本症状は全盲者だけでなく、若年層が不登校や引きこもり、長期の休暇等による昼夜逆転生活を経験した後に発症することもあるので、注意が必要です。
不規則睡眠-覚醒障害
不規則睡眠-覚醒障害は、1日の中で睡眠と覚醒が不規則に出現する症状です。この症状は、脳梗塞などで体内時計のリセット機構が弱くなった患者や、身体疾患のため寝たきり生活を余儀なくされた患者に生じやすいことで知られています。
また、発達障害をもつ子供に見られるケースも多いです。
症状による影響
昼夜問わず睡眠と覚醒が出現してしまうため、夜間の不眠や、日中の眠気、昼寝の増加などが見られます。また、4時間以上眠れなくなるなどの症状も見られるようになります。
概日リズム睡眠障害の治療について

ここまで、概日リズム睡眠障害の発症メカニズムや症状の5タイプについて解説してきましたが、概日リズム睡眠障害を治療するには、やはり専門病院の受診がおすすめです。
病院での治療は何科に行けば良い?
概日リズム睡眠障害を治したい場合は、心療内科や精神科の受診が有効です。
また、近年全国的に設置が進んでいる「睡眠外来」は、睡眠に関する問題を専門的に診療する専門外来で、概日リズム睡眠障害などの睡眠障害の根本治療をはじめ、患者のライフスタイルに合わせ、最適な方法で日常生活に戻れるようサポートしてくれます。
受診を検討している方は一度調べてみると良いでしょう。
概日リズム睡眠障害を引き起こす可能性のある疾患

最後に、別の疾患によって概日リズム睡眠障害を引き起こす可能性について解説していきます。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に気道が何らかの原因で狭められて呼吸がしばしば止まり、その度に睡眠が妨げられる睡眠障害です。発症すると、慢性的な睡眠不足による倦怠感や熟睡感の欠如、日中の耐え難い眠気などを感じるようになります。
本疾患は、睡眠中の呼吸停止が大きな特徴です。この状態を「無呼吸状態」と呼び、ごく短時間ではありますが、気道の閉塞によって呼吸が一時止まったようになります。
しかし、重症になると1時間あたり30回以上も無呼吸は出現するようになり、その度に呼吸が妨げられて目が覚め、概日リズム睡眠障害の原因になる危険性があります。
睡眠時無呼吸症候群を発症した場合は、速やかな治療が必要です。特に、レーザーを使用したいびき治療は、従来では難しいとされてきたいびき・無呼吸の根本治療ができるとして近年注目を集めています。
睡眠時無呼吸症候群について詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
双極性障害(躁うつ病)などの精神疾患
双極性障害(躁うつ病)などの精神疾患も、概日リズム睡眠障害の発症を誘発する要因の一つです。
近年の研究により、睡眠は精神的な影響を強く受けることがわかっており、強いストレスなどによって眠れない状態が続くと、いずれそれが体内時計の乱れにつながり、概日リズム睡眠障害につながると指摘されています。
また、概日リズム睡眠障害を発症した方は、周りと同じように生活ができないという不安から精神的に追い込まれ、さらなる精神疾患に発展する危険性もあります。
強い精神的な不安などで悩んでいる方や、それに伴う睡眠習慣の乱れを自覚している方は、新宿うるおいこころのクリニックへ相談してください。新宿うるおいこころのクリニックでは、診断書の即日最短発行も可能です。
あわせて、上記で紹介した睡眠時無呼吸症候群を併発している方も、いびき治療と一緒に精神科・心療内科の治療を行うことで、さらなる相乗効果と早期治療効果が期待できます。ぜひお気軽にご相談ください。
参考:
治療抵抗性うつ病として入院した概日リズム睡眠 ― 覚醒障害群の1例|柏木 宏子,藤瀬 昇,渡邉 雅文,立花 直子,池田 学
睡眠時無呼吸症候群による概日リズム睡眠障害でお悩みの方はいびきメディカルクリニックへ

いびきメディカルクリニックは、いびき・睡眠時無呼吸症候群の根本改善を目指す専門クリニックで、当院で行っている最新のいびきレーザー治療である「パルスサーミア」はたくさんの患者様にその効果を実感していただいています。
睡眠時無呼吸症候群による概日リズム睡眠障害でお悩みの方は、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。
よくある質問
概日リズム睡眠障害の治療は、精神科や心療内科の受診が有効です。あわせて、近年全国的に設置が進んでいる睡眠外来も、睡眠に関する問題を専門的に治療できるためおすすめです。