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【実は怖い?】睡眠時無呼吸症候群の合併症について

睡眠時無呼吸症候群は、いびきや無呼吸などが主な症状として知られていますが、多くの合併症を引き起こす病気でもあります。

慢性的な睡眠の質の低下により、身体や心に不調をきたし、特に生活習慣病関連の合併症が起きやすいことが特徴です。

生活習慣病は普段の生活を見直すことにより改善できるため、どのような合併症があるのか把握して、予防していくことが大切です。

今回は、睡眠時無呼吸症候群が引き起こす主な合併症や、改善方法などについて解説していきます。

合併症以外の重大なリスクについても説明するので、ぜひ最後までご覧ください。

睡眠時無呼吸症候群の合併症とは

睡眠時無呼吸症候群は、心疾患や生活習慣病・精神疾患などさまざまな合併症を引き起こします。ここでは、睡眠時無呼吸症候群と併発しやすい病気を紹介します。

高血圧

高血圧は睡眠時無呼吸症候群の合併症の中でも、特に発症する確率が高い病気です。
睡眠中に無呼吸状態から呼吸を再開する際は、身体は眠っていますが脳は覚醒状態になります。脳が覚醒状態になると交感神経が優位になり、血圧が上昇してしまいます。
また、無呼吸により血液中の酸素濃度が低下すると、心臓は体中に酸素を送るために活発に働くことも高血圧になる要因です。
睡眠時無呼吸症候群の患者のうち約50%の方は高血圧となっており、高血圧の患者のうち約30%に睡眠時無呼吸症候群がみられます。

糖尿病

睡眠時無呼吸症候群の主な症状であるいびきや無呼吸による睡眠の質の低下は、糖尿病を引き起こす要因となります。
いびきや無呼吸により夜中に何度も目が覚めたり、息苦しい感覚になったりすると熟睡できません。そのストレスから血糖値や血圧が上昇し、脂肪が増えやすい身体になってしまいます。脂肪が増えると血糖値を下げるインスリンの作用が弱まり糖尿病を発症するのです。

また、睡眠時無呼吸症候群と糖尿病は、生活習慣とも深く関わっています。
栄養バランスが悪い食事や、暴飲暴食をすることで脂肪の摂取量が増え、糖尿病を引き起こします。脂肪が増えると、喉の周りにも脂肪がついて気道を塞ぎ、睡眠時無呼吸症候群を発症します。この2つの病気がお互いに悪影響を与えて、症状が悪化することもあるため注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群の診察ガイドライン2020によると、英国での研究では、糖尿病患者のうち65%が睡眠時無呼吸症候群を発症していて、そのうち26%は中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の状態でした。
アメリカでの研究でも、糖尿病患者のうち77%が睡眠時無呼吸症候群を発症していて、そのうち38%が中等症以上の状態となっています。

心不全

心不全とは、不整脈や心筋梗塞などにより心臓が血液を送り出す機能が低下して、十分な血液を全身に送ることができない状態です。
無呼吸状態になると交感神経が優位になり、睡眠中も心臓が活発に活動して休めないため、心臓の機能が低下してしまいます。
慢性心不全の患者は、30~50%ほどの割合で睡眠時無呼吸症候群も発症しているとの調査があります。

脳卒中

脳卒中は、脳の血管が詰まることにより機能が低下して、身体の麻痺を引き起こす病気です。厚生労働省が発表した令和3年(2021)人口動態統計では、脳卒中(脳血管疾患)は日本人の死因の4位となっています。
脳卒中は、その原因により「心筋梗塞」や「脳梗塞」に分類されます。睡眠時無呼吸症候群の患者は、心筋梗塞になる確率が3倍、脳梗塞になる確率は4倍にもなるとの調査があります。

精神疾患

睡眠時無呼吸症候群は、いびきや無呼吸が原因で睡眠の質が低下して、十分に身体や精神が休まらない状態となります。そのような状態が続くと、精神のバランスが崩れて精神疾患になるリスクが上昇。
精神疾患を発症すると行動する意欲が低下して運動量が減るため、肥満になりいびきや無呼吸が悪化します。

2008年に久留米大学で実施された調査によると、睡眠時無呼吸症候群の患者が精神疾患を併発している確率は27.6%でした。
その中でもうつ病が最も多く12.1%、次いで不安障害を含む神経症性障害が6.9%、精神生理性不眠が6.0%という結果になりました。

参考:
睡眠時無呼吸症候群 / SAS
睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020
睡眠時無呼吸症候群と糖尿病
心疾患
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と精神疾患

睡眠時無呼吸症候群が引き起こす合併症以外のリスク

睡眠時無呼吸症候群は、合併症だけでなく日常的な不利益も発生します。ここでは、日中の眠気などによる交通事故や仕事への影響を解説します。

交通事故

睡眠時無呼吸症候群の患者は睡眠の質が低下するため、日中に強い眠気に襲われます。その眠気により、交通事故を起こす例が後を絶ちません。睡眠時無呼吸症候群の患者は、一般の人と比べると交通事故のリスクが約2.4倍となります。

特に以下のような状況での運転が危険です。

・一人で運転しているとき

・高速道路や郊外の真っすぐな道を運転しているとき

・渋滞で低速運転しているとき

重度の睡眠時無呼吸症候群の患者になるほど、短期間で複数の事故を引き起こすという報告もあります。

運転免許更新の際には、道路交通法により「日中の眠気に関する質問」をすることが定められています。虚偽の回答をした場合は、1年以下の懲役または罰金30万円以下に課せられる可能性があるため注意が必要です。

仕事への影響

日中の眠気や疲労感は、仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼします。

日本大学医学部精神医学系 内山真教授の試算によると、睡眠障害による経済損失は年間3.4兆円に上るとされています。

睡眠時無呼吸症候群の患者は、日中の眠気により仕事で細かなミスをしたり、会議中に居眠りをしてしまったりとパフォーマンスが著しく低下してしまうのです。

同僚からの評価が下がり昇進が厳しくなる・最悪の場合は懲戒処分を受ける、など生活に大きな影響を与えるでしょう。

睡眠時無呼吸症候群の影響を少しでも減らすには、通院しての治療や生活習慣の改善はもちろんですが、上司や同僚に症状を知ってもらうことも大切です。

睡眠時無呼吸症候群の患者が日中に眠くなるのは仕方がないことで、決して怠慢からではありません。しかし、症状を知らないと、ただ居眠りしているようにしか見えず印象が悪化します。

事前に睡眠時無呼吸症候群について理解してもらえば、運転が必要な仕事をさせないなどのサポートをしてもらえるでしょう。

参考:
SASが招く損失
道路交通法と睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群の症状

合併症だけでなく、睡眠時無呼吸症候群はどのような症状を引き起こすのかも知っておきましょう。主な症状は以下の通りです。

・いびき

・無呼吸

・夜中の覚醒

・日中の眠気や疲労感

睡眠中に発生する症状が多いため、睡眠時無呼吸症候群になっていても自分では気が付けないケースが多いです。

いびきを家族などから指摘されることや夜中に息苦しさから目を覚ます・起床時から疲労感がある、などの異変を感じたら、病院で診察を受けるといいでしょう。睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、いつの間にか重症化していて命に関わる危険があります。

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群は、喉の周りの脂肪や筋肉により気道が塞がれることが原因です。気道が塞がると空気の通り道がなくなり無呼吸状態や、無理やり空気を通そうとしていびきが発生します。気道が塞がる主な原因は以下の通りです。

・肥満で喉周りに脂肪が付いた

・顎が小さい

・飲酒により喉周りの筋肉が弛緩した

・睡眠薬などにより喉周りの筋肉が弛緩した

上記の原因は「閉塞性」の睡眠時無呼吸症候群と呼ばれます。睡眠時無呼吸症候群の患者はほとんどが閉塞性ですが、循環機能の低下により呼吸中枢が反応しなくなる「中枢性」の睡眠時無呼吸症候群もあります。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

無呼吸症候群の治療には、症状度の重さによりいくつかの治療法があります。ここでは、病院での治療法について解説します。

CPAP

CPAPは、鼻にマスクを装着して機械から空気の圧力を送り、睡眠中に気道が塞がれるのを防ぐ治療法です。

気道が開いた状態になれば、いびきや無呼吸がなくなり睡眠の質が向上します。CPAPを継続することにより、日中の眠気がなくなる・夜中に覚醒しなくなる、など多くの患者の症状が改善しています。

日中の眠気や疲労感がなくなれば、QOL(生活の質)も向上するので、CPAPは睡眠時無呼吸症候群の治療の柱となっています。

ただし、睡眠時に鼻にマスクをつけるので、慣れるまでに苦労をする方は多いです。CPAPは継続的な使用をしないと効果が薄いので、最初のうちは我慢してマスクを装着しましょう。どうしても就寝中に取り付けるのに慣れない方は、日中に10分程度装着して慣れてきたら夜間も試してみてください。CPAPに慣れるまでに半年ほどかかる方もいるので、気長に取り組むといいでしょう。

また、鼻づまりがある方は、空気を送り込めないのでCPAPの効果が低くなります。鼻水が気道の奥へ流れてしまい、不快感を生じることもあるため、鼻詰まりがある場合は医師に相談してください。

マウスピース

マウスピースで下顎を上顎よりも前に出すように固定すると、気道を広い状態に保てます。軽傷から中等症までの患者に効果が期待できる治療法です。ただし、マウスピースは市販のものではなく、睡眠時無呼吸症候群専用に作られたものが必要です。一般的には、診察した医師から紹介された歯科で製作してもらいます。

マウスピースもCPAPと同じく、慣れるまでに時間がかかることがあります。違和感や痛みから、睡眠中に無意識でマウスピースを外してしまう方も。多くの方は数日から1週間程度で慣れるのが一般的の様です。

手術

アデノイドや扁桃の肥大が原因で気道が塞がれている場合は、外科手術により肥大部分を切除して気道を広げます。他の治療で効果が出なかった場合にも、手術をすることがあります。

切除手術を受けた患者の約50%に症状の改善が見られますが、入院が必要であり、術後は激しい喉の痛みを感じるケースもあります。

その他にも、上下の顎を前に出す手術や下顎だけを前方に移動させる手術などがあり、患者の状態などにより最適な手術が選択されます。

パルスサーミア(レーザー治療)

最新のレーザー治療であるパルスサーミアは、レーザーにより咽頭を切らずに引き締めるため、痛みが少ない治療法です。

外科的手術のように入院や全身麻酔は必要なく、一回の施術も15~30分ほどなので気軽に治療を受けられます。

パルスサーミアは複数回に分けて治療を行います。1回受けただけの方でも50%ほどが効果を実感していますが、複数回にわたり治療を受けた方は80%以上の方が症状の改善を感じています。

パルスサーミアは、大掛かりな手術で会社を休みたくない方や、ダウンタイムが少ない治療を受けたい方におすすめです。

睡眠時無呼吸症候群の治療法についてより詳しく知りたい方は下記コラムをご覧ください。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や糖尿病などの生活習慣に関わるものから、うつ病などの精神疾患まで幅広い合併症を引き起こすことが特徴です。特に心不全や脳卒中などの循環器系の病気は、突然死のリスクが高まるため注意が必要です。

また、合併症だけでなく日中の眠気により交通事故のリスクが2.4倍になる、居眠りや集中力の低下により仕事での評価が下落するなど、多くのデメリットがあります。

睡眠時無呼吸症候群の治療は、鼻に装着したマスクから空気を送り込むCPAPが軸となります。しかし、睡眠中の違和感により無意識で外してしまう方がいることが特徴です。

CPAPでの効果が薄い方は、肥大したアデノイドや扁桃を切除する外科的手術を行うこともあります。外科的手術は、入院が必要になる・術後に激しい痛みが出ることがある、など患者の負担が大きくなりがち。

最新の治療法であるパルスサーミアは、入院が不要で痛みも少なく咽頭を引き締められるため、気軽に受けられる治療法です。

睡眠時無呼吸症候群は、症状の程度などにより治療法を変える必要があるので、医師と相談して最適な治療法を見つけてください。

【よくある質問】

Q. 睡眠時無呼吸症候群の症状は?

A. 主な症状はいびきや無呼吸です。いびきや無呼吸は睡眠の質を低下させるため、日中の眠気や疲労を感じさせます。睡眠中の無呼吸により、息苦しくなり中途覚醒することも多くなります。また、高血圧や糖尿病・心不全・精神疾患などの合併症を引き起こします。

Q. 睡眠時無呼吸症候群はどのような人がなる?

A.肥満の方や顎が小さい方は、気道が塞がりやすいため睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高まります。また、飲酒や睡眠薬を常用していると喉の周りの筋肉が弛緩するため、同様に発症リスクが高まります。

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