【あなたは大丈夫?】睡眠時無呼吸症候群の重症度を分類

睡眠時無呼吸症候群の治療
2023.05.15

「睡眠時無呼吸症候群」は、何らかの原因で睡眠中に呼吸が止まってしまう疾患です。大きないびきが特徴的なため、家族や友人から指摘されてはじめて、睡眠時無呼吸症候群に気付く方も多いでしょう。
心臓や脳などに負担をかけるので、さまざまな合併症を引き起こします。また日中に眠気を及ぼすため、交通事故や業務上の災害を起こす可能性も否定できません。

睡眠時無呼吸症候群は、AHIと呼ばれる無呼吸低呼吸指数を用いてその重症度を示します。重症度によって、検査法や治療法が異なるため、確実に把握する必要があるでしょう。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の重症度をあらわすAHIについて、詳しく説明します。

睡眠時無呼吸症候群の重症度を測るAHIとは?

電車通勤中に寝てしまったサラリーマン

睡眠時無呼吸症候群の重症度は、Apnea Hypopnea Indexの略称である「AHI」であらわされます。AHIは、睡眠の1時間あたりに確認された無呼吸と低呼吸の合計回数です。睡眠中に起きた無呼吸と低呼吸の回数を足し、総睡眠時間で割って算出します。
以下は、AHIの数値と、分類される睡眠時無呼吸症候群の重症度を示した表です。

AHI(1時間あたりの無呼吸の回数)重症度
5未満正常
5以上15未満軽症
15以上30未満中等症
30以上重症

AHIの数値によって、軽症・中等症・重症の3つに分けられます。
AHIが5以上で自覚症状がある場合や、自覚症状はないもののAHIが15以上の場合は、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

AHIが30以上の場合は、自覚症状の有無は問われません。睡眠時無呼吸症候群の重症であると診断されます。睡眠時無呼吸症候群の重症患者は、心臓病や糖尿病などの合併症リスクが高まります。早期的な治療開始が求められるでしょう。

参考:
医学博士 三島 渉、2023/04/11、睡眠時無呼吸症候群の重症度がわかる指標「AHI」について

睡眠時無呼吸症候群による合併症

ベッドに座って頭を抱える女性

睡眠時無呼吸症候群の患者は、日中の眠気で生活に支障を及ぼすばかりか、命に関わる重大な合併症を引き起こすリスクが高まります。睡眠時に複数回の無呼吸や低呼吸が起きることで、心臓や脳に負担をかけるからです。
ここからは、睡眠時無呼吸症候群の患者が発症しやすい合併症を紹介します。

高血圧

日本呼吸器学会の研究によると、睡眠時無呼吸症候群の患者の約50%が高血圧であるといわれています。
睡眠時無呼吸症候群は、身体は寝ている状態でも、無呼吸から呼吸を始めるタイミングで脳が目覚めています。睡眠中は、副交感神経が優位になっているのが通常です。しかし脳が覚醒した状態では、交感神経が優位になり、血圧が上昇します。こうして無呼吸と呼吸の再開が繰り返され、血圧変動が持続されるため、心臓や血管に負担をかけているのです。

また血圧が常に変動するため、酸化ストレスによる影響を受けて血管が傷つきやすくなっています。睡眠時無呼吸症候群の合併症に血管に由来した病気が多いのは、睡眠中の血圧変動が原因といえるでしょう。

心不全

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下したため、充分な血液を全身に送り出せない状態のことです。睡眠時無呼吸症候群の患者は、心不全の発症リスクも高くなっています。

睡眠時の無呼吸や低呼吸は、全身に酸素が行き届きにくくなる原因です。低酸素状態が続くと、やがて低酸素血症となり、細胞の老化や体内の炎症反応が起きやすくなります。また、低酸素血症は動脈硬化を促進します。睡眠時無呼吸症候群が心機能の低下や心不全につながるのは、低酸素状態が招く悪循環によるものです。

不整脈

不整脈は、脈拍が異常に速くなったり遅くなったりと、心臓の鼓動が不規則になる状態を指します。睡眠時無呼吸症候群の患者の約50%に、不整脈が確認できたという研究結果も報告されています。

心房細動も不整脈のひとつです。心臓の収縮のリズムが不規則になり、動悸や息切れを感じやすくなります。重症化すると、脳梗塞や全身性塞栓症などの発症リスクも高まるため、適切な治療を受けましょう。

脳卒中

AHIで重症と診断された睡眠時無呼吸症候群の患者は、脳卒中の発症リスクが高まるといわれています。

脳卒中とは、脳内にある血管がつまる病気です。血管が破れて出血し、脳に損傷を受ける可能性があります。睡眠時無呼吸症候群が脳卒中を合併しやすいのは、睡眠中の無呼吸で低酸素状態が繰り返され、脳内の血管に影響を与えるからです。
脳卒中は、命の危険にさらされるほどの重い病気です。また言語障害や麻痺などの後遺症が出る可能性もありますので、睡眠時無呼吸症候群の治療は欠かせません。

糖尿病

糖尿病も、睡眠時無呼吸症候群の合併症として有名です。血液中に含まれるブドウ糖が増加し、高血糖状態が持続します。

睡眠時無呼吸症候群とともに、肥満や加齢が原因で発症しやすい病気です。高血圧や心不全と同様、低酸素血症や交感神経が優位になることで、糖代謝異常を引き起こすのではないか考えられています。
糖尿病は自覚症状のないまま進行してしまうため、網膜症や神経障害、脳卒中などの発症リスクに注意が必要です。

参考:
睡眠時無呼吸症候群の合併症について
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020

メカニズムによる睡眠時無呼吸症候群の分類

診察室イメージ

睡眠時無呼吸症候群は、無呼吸が起きるメカニズムによって大きく2つに分類されます。メカニズムによって治療へのアプローチが異なりますので、自分がどちらのタイプであるか、確認してみましょう。

閉塞性睡眠時無呼吸型(OSA)

睡眠時無呼吸症候群の多くは、上気道に空気の通るスペースがなくなり、鼻や口からの気流が止まるために起きます。これを、閉塞性睡眠時無呼吸型(OSA)と呼びます。なぜ、上気道に空気の通り道が確保できなくなるのでしょうか。OSAのおもな要因は、以下の通りです。

・首や喉周辺の脂肪沈着
・扁桃肥大アデノイド
・舌根沈下
・口蓋垂や軟口蓋による上気道の狭窄

体重の増加で首や喉の周辺に脂肪がつくと、上気道が狭くなるため、気道が確保しにくくなります。肥満体型の方がいびきをかきやすいのは、このためです。また扁桃腺や舌の付け根が、重力やリラックスによって下垂し、上気道を塞ぐこともあります。口蓋垂や軟口蓋による上気道の狭窄も、同様のメカニズムです。大きすぎる口蓋垂で気道が狭くなるため、無呼吸や低呼吸を引き起こします。

ほかにも顎の小ささや歯並びなど、もともとの骨格上の問題もあるでしょう。肥満体型でない人でも睡眠時無呼吸症候群になる可能性があります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)

中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)とは、そもそもの呼吸運動が止まるために起きる無呼吸症候群です。何らかの原因で脳からの指令が止まり、呼吸ができない状態になります。

OSAとの最大の違いは、呼吸努力が見られない点です。上気道の狭窄で呼吸が止まるOSAとは異なり、呼吸するのを忘れているかのように見えるでしょう。そのためいびきは確認できません。CSASは、睡眠時無呼吸症候群患者全体の数%と少数です。また、脳からの指令がストップするメカニズムは解明されていません。

参考:
睡眠時無呼吸症候群の基礎

睡眠時無呼吸症候群の検査方法

寝ている女性

睡眠時無呼吸症候群は、さまざまな検査方法を用いて重症度をあらわします。重症度によって、治療法が異なるため、治療前の検査は欠かせません。
ここでは、睡眠時無呼吸症候群の検査方法について紹介します。

呼吸簡易検査

睡眠時無呼吸症候群の検査で代表的なのは、睡眠中の呼吸状態をチェックする「呼吸簡易検査」です。「簡易ポリグラフ検査」とも呼ばれています。

持ち運びできる簡易型の機器を専門医から貸し出してもらい、自宅に持ち帰って検査します。就寝前に、鼻と指に機械を装着し、睡眠中の無呼吸の回数、体内の酸素飽和度の変化、いびき、心拍などをモニタリングします。
呼吸簡易検査のおもなメリットは以下の通り。

・入院不要で検査可能
・待ち時間が不要
・リラックスした状態で検査できるため、普段の睡眠に近い検査結果が得られる
・低コストで検査できる

携帯型機器をクリニックから借りて検査するため、基本的に入院は不要です。検査待ちの時間や入院のための時間を確保する必要がありません。自宅で簡単に検査でき、普段の睡眠に近い検査結果が得られます。

一方、呼吸簡易検査のデメリットは、検査結果の精度が低い点です。簡易検査では睡眠時間が測定できません。自分で就寝時間を計測するため、実際に眠り始めた時間と誤差が生じる可能性があります。また技師による監視がないため、データ不良が増える点も懸念事項でしょう。
簡易検査で睡眠時無呼吸症候群の可能性があると診断された場合は、精密検査である睡眠ポリグラフ検査に進みます。

睡眠ポリグラフ検査(PSG)

睡眠ポリグラフ検査は、より詳細な睡眠のデータを収集するための検査です。ポリソムノグラフィ検査やPSGとも呼ばれています。脳波や呼吸の状態、心電図、眼球運動、筋電図などを、装置を使ってモニタリングし、総合的な睡眠障害の診断をおこないます。総睡眠時間が測定できるので、1時間あたりのAHIが正確に計測できる点が、簡易検査との大きな違いです。

睡眠ポリグラフ検査は、一泊二日の入院が必要です。夕方頃入院して簡単な説明を受けたのち、頭や顔、手足などにセンサーを装着して就寝します。装着時も就寝時も、痛みはありません。
早朝には検査が終了するため、すぐに退院できます。検査結果や今後の治療方針については、次回の診察日を待ちます。

参考:
2019/07/24、睡眠時無呼吸症候群の指標であるAHIとは何?

【重症度別】睡眠時無呼吸症候群のおもな治療方法

病院のベッドで眠る高齢者

最後に、睡眠時無呼吸症候群のおもな治療法を紹介します。重症度によって治療法は異なりますので、ぜひ参考にしてください。

軽症の治療法

AHIが5~15で軽症と診断された場合は、おもに生活習慣の改善が求められます。具体的には、以下のような生活習慣の見直しが有効でしょう。

・ダイエット
・禁煙
・禁酒

肥満体型による上気道の閉塞が原因の睡眠時無呼吸症候群患者は、ダイエットが不可欠です。減量して、首や喉周辺の脂肪を減らしましょう。減量だけでいびきが改善され、睡眠の質が上がる可能性は十分あります。

喫煙習慣も、睡眠時無呼吸症候群の発症を高めるといわれています。タバコに含まれるニコチンは強い覚醒作用があり、睡眠の質を低下させる原因のひとつです。また気道に炎症を起こすため、気道の狭窄につながると考えられています。喫煙習慣のある人と非喫煙者では、AHIが約2~4倍高くなるとの情報があります。これを機に、禁煙に挑戦してみてはいかがでしょうか。

就寝前のアルコールの摂取も、睡眠時無呼吸症候群を発症される原因です。アルコールの作用で筋肉が緩むため、舌根沈下を招いて無呼吸が起きやすくなります。寝酒が習慣になっている方は、日中の運動量を増やしたり、リラックスする時間を確保したりして、寝つきをよくする工夫を試してみましょう。

中等症~重症の治療法

AHIが15以上の中等症から30以上の重症と診断された場合は、専門医による治療が必要です。治療法は重症度ごとに選択されるのではなく、上気道を塞いでいる原因ごとに選択されます。
おもな治療方法は以下の3つです。

・CPAP
・マウスピース療法
・外科手術

睡眠時無呼吸症候群の治療法といえば、CPAPが代表的です。CPAPは、経鼻的持続陽圧呼吸療法とも呼ばれています。その名のとおり、専門の機械を使って鼻から空気を送り込み、空気の圧力で気道の閉塞を防ぎます。CPAP装着の見た目から、導入に消極的な方がいらっしゃいますが、睡眠時の無呼吸状態にはとても有効的です。

マウスピース療法とは、就寝時にマウスピースを装着して気道を確保する治療法です。下顎を数ミリ前に移動した状態で固定し、舌根沈下を防ぎます。マウスピースは患者ごとに製作されますが、健康保険が適用されます。

外科手術でも、睡眠時無呼吸症候群の治療は可能です。口蓋垂や扁桃腺をメスやレーザーで切除して、気道を確保します。術後に感じる痛みや回復に時間がかかる点などは、避けられないデメリットでしょう。

しかし最近では、非切除のレーザー治療が可能になっています。短時間で治療でき、気になる痛みも抑えられています。初回の治療から効果を感じる方もいらっしゃる、画期的な治療方法です。

睡眠時無呼吸症候群の治療内容についてより詳しく知りたい方は下記コラムをご覧ください。

まとめ

伸びをする女性

睡眠時無呼吸症候群の重症度は、AHIと呼ばれる1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数で分類されます。AHIが5以上で自覚症状がある場合や、自覚症状はないもののAHI15以上の場合は、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。30を超えると重症と分類されるため、早期治療が求められるでしょう。

睡眠時無呼吸症候群を放置していると、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。心臓病や脳卒中など、命に関わる病気の発症リスクも高まるため、軽視は厳禁です。

睡眠の質に悩みがある方や、家族にいびきを指摘されて不安に感じている方は、イビキメディカルクリニックまでご相談ください。イビキメディカルクリニックはいびき治療の最新である「パルスサーミア」を導入しています。パルスサーミアは、深達性の高いレーザーで口蓋垂を引き締めるレーザー治療です。切除や切開せず、問題の部分にアプローチをかけていきます。
初回カウンセリングは無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【よくある質問】

Q.睡眠時無呼吸症候群の重症度はどのように分類されている?

A.睡眠時無呼吸症候群はAHIと呼ばれる指標で重症度を分類しています。AHIが5~14回は軽症、15~29回は中等症、30回以上は重症です。

Q.睡眠時無呼吸症候群を治療しないとどうなる?

A.睡眠時無呼吸症候群を治療せず放置しておくと、血中酸素濃度が低下し、不整脈や心不全などの重大な病気につながります。また日中の眠気で交通事故を起こす可能性もあるため、早めの治療が重要です。

このページの監修医師
田沼 欣樹いびきメディカルクリニック いびき専門医
いびきや睡眠時無呼吸症候群は様々な病気に合併しやすいと言われています。健康寿命を伸ばす為にも早期診断・治療をおすすめします。いびきや睡眠時無呼吸症候群で悩む患者様へ、当院のレーザー治療で快適な睡眠手に入れていただき、健康をサポートすることをモットーに日々取り組んでいます。
田沼 欣樹
いびきや睡眠時無呼吸症候群は様々な病気に合併しやすいと言われています。健康寿命を伸ばす為にも早期診断・治療をおすすめします。いびきや睡眠時無呼吸症候群で悩む患者様へ、当院のレーザー治療で快適な睡眠手に入れていただき、健康をサポートすることをモットーに日々取り組んでいます。
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