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しっかりと寝ているはずなのに日中眠気に襲われる、朝起きた際に頭が痛いという場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、早期治療をしなければ重い病気を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
そこで、睡眠時無呼吸症候群の治療方法と、自宅でもできる対策について紹介します。
睡眠時無呼吸症候群とは?主な症状

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に何回も呼吸が止まる状態(睡眠時無呼吸)を繰り返す病気です。いびきだけではなく、次のような症状が起こります。
- 十分な睡眠がとれない
- 夜中に突然目が覚める
- 起きた時に頭が痛い
- 昼間強い眠気に襲われる
さらに、高血圧や不整脈などの循環器系や呼吸器系の病気と合併症を起こすケースも少なくありません。
加えて昼間強い眠気に襲われる症状から、車を運転する場合には居眠り運転による事故を起こしやすいため、治療しないと命に関わることもあるのです。
睡眠時無呼吸症候群は検査をしたうえで、患者さんに適した治療を行う必要があります。
睡眠時無呼吸のメカニズム

睡眠時無呼吸の症状は、空気を通る気道が全て塞がれる、もしくは部分的に塞がれることによって生じます。
そのため、睡眠時無呼吸の症状が出やすい人は肥満体型や首が短い、顎が小さいなどの特徴を持っていることが多いです。
睡眠中は咽頭の筋肉や、筋肉の塊である舌が緩み、気道が狭くなりやすい状態になります。
加えて肥満体型や首が短い、顎が小さいなどの特徴がある場合、元から気道が狭い構造であることが多く、気道が塞がりやすいのです。
気道の狭い構造の人が睡眠中の気道が狭くなった状態で息をすると、肺の陰圧で気道がさらに狭まり閉じてしまいます。そして呼吸ができなくなるというのが睡眠時無呼吸のしくみです。
睡眠時無呼吸症候群の対処方法

睡眠時無呼吸症候群の予防をしたい場合や診断された場合、普段の生活の中でどのようなことに気をつけると良いのでしょうか。
睡眠時無呼吸症候群の治療と同時に見直したい、生活習慣について紹介します。
ダイエットをする
肥満体型になると、首の周辺にも脂肪が増えるので気道が狭くなります。
体重を減らすだけでも、睡眠時無呼吸症候群の症状を解消できる可能性があります。
減量すれば喉に溜まっている脂肪が落ちて気道が広がるので、いびきをかきにくくなるでしょう。
アルコールを控える
アルコールを摂取することによって気道の筋力が低下します。
気道の筋肉が緩み、気道が通常の睡眠よりも狭くなるため睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させてしまいます。
特に、寝る前にアルコールを摂取しないように注意しましょう。
薬の服用を制限する
アルコールと同じように、精神安定剤や睡眠薬も気道の筋力を低下させるので筋肉が緩み、気道が狭くなります。
精神安定剤や睡眠薬といった薬を服用しなければならない場合には、服用量を少なくできるかどうか主治医に相談しましょう。
禁煙
タバコの煙によって気道や喉に炎症や腫張が起こり、腫れることで気道が狭くなってしまいます。
タバコは無呼吸の症状を悪化させます。睡眠時無呼吸症候群を改善するためには禁煙を推奨します。
鼻の乾燥予防
鼻の内部は通常湿っている状態ですが、乾燥すると空気の流れが悪くなり、いびきをかきます。
加湿器を使用して室内の湿度をあげたり、市販されている点鼻スプレーを使ったりすることが、鼻の乾燥を防ぐ方法として有効です。
口呼吸をしない
寝ている間に口が開いていると、喉の奥に舌が落ちてしまうので、いびきをかきます。
寝ている間は自分で意識できないため、鼻が詰まっていないのであれば口にテープを貼って寝るという方法も良いでしょう。
鼻づまりを解消する
鼻づまりを解消するために、鼻腔を広げる効果のある商品が市販されています。
鼻の中に入れて使用するものや皮膚に貼るテープなどです。口呼吸を防ぐこともできるので、鼻腔を広げるための商品を活用してみましょう。
ただし、肌の表面にテープを貼り鼻腔を拡張するアイテムは、肌が弱い人が使用するとかぶれる可能性があるため注意が必要です。
肌にテープを使用しても問題ない場合には、プラスチックタイプのテープを使用すると良いでしょう。
鼻の内部に入れて使用するアイテムにはプラスチックやシリコン製の商品があります。鼻を物理的に広げることによって、鼻づまりを解消する効果が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群の治療法

睡眠時無呼吸症候群は、循環器や呼吸器などの生命維持に関わる合併症を起こしうる病気です。
病気の重症度によって適切な治療が必要になります。
睡眠時無呼吸症候群の主な治療法について紹介します。
CPAP(シーパップ)治療
CPAPとは、専用の装置からマスクとホースを通して鼻から空気を送ることで、気道が塞がらないようにする方法です。
CPAP療法を実施することによって、寝ている間のいびきや無呼吸状態を減らす効果が期待できます。
ほとんどの睡眠時無呼吸症候群の方に、症状の改善が期待できる有効な治療法です。
また、睡眠時無呼吸症候群により血圧が上昇している場合には、血圧を下げる効果も期待できます。
この治療法は、検査によって診断基準を満たす場合には保険が適用になります。
口腔内装置治療
口腔内装置(マウスピース)は下顎を若干前に出るように固定し、気道に空気が通りやすくする方法です。
予備軍の方から軽度、中等程度の睡眠時無呼吸症候群の方にすすめられます。また、CPAP療法と併用して使用することも可能です。
口腔内装置は歯科医師に製作を依頼するもので、製作には保険が適用される場合があります。
外科手術
扁桃肥大やアデノイド肥大といった症状があったり、生まれつき顎が小さかったりといったことが睡眠時無呼吸症候群の原因である場合には、外科手術で原因を除去することがあります。
全ての方に手術ができるわけではありません。
さらに、鼻に疾患がある場合には口腔内装置やCPAP療法を妨げてしまうために、手術を行わなければならないケースもあります。
酸素療法
呼吸器系疾患や心臓疾患がある方には、低酸素状態を解消するために酸素吸入療法とCPAPを併用して治療します。
CRAPの鼻のマスクに直接チューブを接続し、酸素を供給するという方法です。
中枢性睡眠時無呼吸の治療
心不全や脳出血、脳梗塞が原因である中枢性睡眠時無呼吸症候群を患っている場合は、中枢性の疾患に対する投薬治療を行います。
原因が心不全の場合には運動療法や食事療法といった心臓リハビリテーションも効果的です。
酸素療法やCPAPを併用することもあります。
ナステント
ナステントとは、鼻から喉にかけてチューブを挿入して空気をスムーズに通し、気道が塞がれるのを防ぐ治療です。
チューブを通しているため、寝ている間に呼吸が止まったりいびきをかいたりすることを予防できる可能性があります。
CPAP療法をするほどではない、軽症の場合に適した治療法だといえます。
ナステントは持ち運びが簡単で使った後は捨てられるため、出張や旅行時にも活用できるでしょう。
切除するレーザー治療
従来のレーザー治療は切除を伴います。「口蓋垂」や「軟口蓋」をレーザーで切り広げ縫合し、粘膜の膨らみを取り除く手術を行います。切開手術で気道を切り広げる場合、術後の数週間は食べ物が飲み込みにくく、強い痛みをともなったり、異物感を感じたりなど、長いダウンタイムがあります。
非切除のレーザー治療
最新のレーザー治療です。メスで体を傷つけることがないため、負担が軽減されることがメリットです。
イビキメディカルクリニックで扱う非切除のレーザー治療「パルスサーミア」は表面を蒸散させずにさらに深層部へアプローチするため、喉を切除する治療とは異なり、痛みがほぼなくダウンタイムが短いため、日常生活に大きな支障が出ないことが特徴。
投薬やいびき解消グッズを使った治療法

睡眠時無呼吸症候群の治療には、投薬をする方法や鼻腔を広げるグッズでセルフケアをする方法もあります。
主な3つの治療法について見ていきましょう。
鼻テープやマウステープ
鼻腔を拡張するテープやマウステープは、寝ている間に少しいびきをかくことがある場合や軽度の睡眠時無呼吸症候群には有効な場合もあります。
薬局や通信販売などで手に入れることができます。ただし、寝ている間にテープが外れるケースも多いため注意が必要です。
市販のテープで様子を見て良いのかどうかは、医師に相談する必要があるでしょう。
鼻づまり解消スプレー
一時的な鼻づまりを解消するためのスプレーが有効な場合もあります。
ただし、鼻スプレーはポリープがあったり、鼻に空気が通りにくい構造であったりする場合には効果がありません。
また、スプレーに依存的になることがあるので、使用にあたっては医師に相談しましょう。
ホルモン剤や眼圧降下剤(炭酸脱水素阻害薬)
眼圧降下剤や黄体ホルモン剤は、睡眠時無呼吸症候群の症状が軽い場合に処方されるケースがあります。
しかし、薬剤を使った治療は症状が中等度から重い場合には有効ではありません。
自己判断は危険!主治医と相談しながら治療をしよう

睡眠時無呼吸症候群への対処を自己判断するのは危険です。
また、治療を始めた後でも、治療の効果を自己判断しないようにしましょう。
医師と話し合ったうえで、治療の効果を確認するために検査を受ける必要があります。
睡眠時無呼吸症候群は年齢を重ねたり、体重が変化したりすることによって重症度が変わる病気です。
知らず知らずの悪化により、いびきをかいたり昼間眠くなったりすることもあります。症状によってはいくつかの治療方法を並行して行わなければなりません。
定期的に医師の診察を受け、適した治療法に調整していきましょう。
睡眠時無呼吸症候群は合併症を伴う恐れがあり、決定的な治療法のない、長期的な付き合いの必要な病気です。
心当たりのある症状がありましたら、お早めに専門クリニックにご相談ください。